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【暮らし】

大腸がん発症部位で左右差 遺伝子異常タイプに違い

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 がんによる国内の死亡者数で2番目に多い大腸がん。最近の研究で、最初に大腸の左側にできたがんと右側にできたがんとで、違いがあることが分かってきた。標準的な治療を示すガイドラインにも左右差を考慮した治療が盛り込まれそうだ。(稲田雅文)

 「以前から、大腸の左と右にできるがんで違いがあることは知られていた。右側(盲腸、上行結腸)にできるがんの方が左側(下行結腸、S状結腸、直腸)より悪性度が高い。発見が遅れることがその理由だと思われていたが、左と右で遺伝子異常にも違いがあることが分かってきた」。愛知県がんセンター中央病院(名古屋市)薬物療法部の室圭(むろけい)部長は話す。

 大腸の部位別にがんができる比率を見ると、直腸が四割と最も多く、左側だけで七割を占める。しかし、ステージが比較的進行しておらず、小さい腫瘍が多い。一方、右側にできたがんはステージが進行し、大きな腫瘍であることが多いという。

 違いが出るのは、自覚症状が左側の方が出やすいことがある。肛門に近い左側にがんができた場合、便通が悪くなったり便に血液が付いていたりして気づきやすい。一方、肛門から遠く便が軟らかい状態で通る右側にできたがんは、大きくなるまで自覚症状が出にくい。

 最近は、大腸がんの左右差は見つかりやすさだけでなく、遺伝子異常のタイプの違いも背景にあることが分かってきた。

 二〇一六年に米国臨床腫瘍学会で報告された大規模な大腸がんの臨床試験の結果によると、手術ができない大腸がん患者を対象に、最初にできた大腸がんが左側だった七百三十二人と右側二百九十三人を比較。平均的な生存期間は左側の方が長かった一方、化学療法で使われる二種類の分子標的薬の効き方が左右で違った。

 室部長によると、母体の中で大腸が形成される過程が、左側と右側で違いがあり、血液を供給する血管の系統も異なるという。悪性度が高いタイプの遺伝子異常が多いのは右側で、形成時の由来の違いから遺伝子異常にも違いが生じ、治療成績にも影響していると考えられるという。「どの分子標的薬を選ぶのか、左右差を考慮して選ぶ必要がある」と室部長は話す。

 医師らでつくる大腸癌(がん)研究会が一六年に出した最新のガイドラインでは、左右差を踏まえた治療方針までは記載されておらず、一九年に刊行予定の新ガイドラインで盛り込むかが今後議論される。がんセンター中央病院ではすでにどちら側にできたがんかや、遺伝子異常の違いを組み合わせた治療方針を運用している。

 室部長は「手術が不可能と判断され延命目的で化学療法を始めた人が、薬の効果でがんが小さくなって切除が可能になるケースもある。最初の治療で有効な薬を使うことが非常に重要で、左右差を考慮した治療は今後の標準になりそうだ」と語る。

 <大腸がんの治療> 早期発見が大切で、腫瘍の深さが浅ければ開腹しなくても内視鏡で切除が可能。大きな腫瘍の場合は、腹腔(ふくくう)鏡手術などで切除する。がんが他の臓器へ転移していて手術ができなかったり、手術で切除後に再発して切除が不可能になったりしたがんに対しては、延命を主な目的に抗がん剤と分子標的薬を組み合わせた化学療法が実施される。

 

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