東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 4月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

<Life around the World> 食べ笑い、外で団欒

 花や新緑が鮮やかな季節となった。心地よい日差しの下で食べる料理は格別。色とりどりの料理を並べた弁当で団欒(だんらん)することが多い日本だが、海外は事情が若干異なるようだ。強烈な発酵臭が漂う魚を次々と頬張ったり、満開の桜を楽しむ花見もアルコール抜きだったり。春のお出かけ、何を食べます?

シャム・エルネシームを祝い魚を食べる家族連れ=カイロ近郊で

写真

◆エジプト 春告げる魚の発酵臭

 エジプトで春の到来を祝う祝日「シャム・エルネシーム」が「そよ風をかぐ」の意味だと聞けば、柔らかな日差しを浴びた花畑の中で弁当箱を広げ「大好物のお稲荷(いなり)さんだ!」なんて想像するだろう。そんな妄想を裏切る強烈な魚の発酵臭が、街中に漂う。

 日本語で「春香祭」と記すこの祝日の由来はファラオが生きた古代エジプトにさかのぼる。アラビア語が導入される以前の言葉で収穫期を意味する「シェム」が語源。塩漬けの魚を神々にささげたのが始まりとされる。

ニシンのくん製「リンガ」を量り売りする店の従業員=カイロで

写真

 カイロ中心部の老舗店シャヒーンでは、ボラを塩漬けにした「フェシク」が一キロ百六十エジプトポンド(九百七十円)、ニシンのくん製「リンガ」が一キロ六十ポンド。三代目のシャディさん(33)によると、祭りに合わせて十トンを売るという。

 「フェシクは最高の魚を選び、自社工場で最高の塩で漬ける。安心して食べられるから、常連客が途切れないのさ」とシャディさん。この時期、保健当局は「フェシク食べ過ぎ注意報」を発令。自家製で発酵方法を誤り、食あたりで死人が出るというから驚きだ。

 春香祭当日は、家族で公園などの屋外に出掛けるのがお決まり。キリスト教の一派、コプト教の復活祭翌日の四月九日、カイロ近郊ギザの動物園に行くと、あふれんばかりの家族連れが花見のように車座になって食事を楽しんでいた。

 身をほぐし、油や青唐辛子で漬けたフェシクやリンガをエジプトのパン「アエーシ」で包み、ネギやレモンと一緒に食べる。フェシクの塩辛さは酒盗、リンガはクサヤに似た味わい。日本人にもなじみやすく酒に合いそうだ。あちこちから「食べていけ」と声が掛かり、はしご酒ならぬ「はしごフェシク」。おなかは大丈夫だろうか…。  (カイロ・奥田哲平、写真も)

咲きほこる桜

写真

◆米国 お酒NO! 桜に酔う

 米首都ワシントンの春は、ポトマック川ほとりの桜の開花とともに訪れる。河畔には日本から送られたソメイヨシノなどの桜が3000本以上。多くの見物客でにぎわうが、花見の風景は日本と大きく異なる。桜の木の下にシートを敷き、食べ物やお酒を飲んで楽しむ姿はほとんど見られない。

 満開を迎えた4月初めの日曜日、周辺は見物客でごった返したが、桜の木の下に座り込み、食事をしているのは数組。大半は散歩をし、写真を撮りながら花びらの下を過ぎ去る。

 河畔の売店周辺でのみ、ホットドッグ(6ドル=約640円)やハンバーグ(7ドル=約750円)などを買い、近くの木の下で楽しむ数組の姿が見られた。

売店のホットドッグとポテト=いずれもワシントンで

写真

 家族で訪れたジェイソン・アンビュロースさん(41)は、売店で買ったホットドッグを頬張りながら「外で食べるのは格別」と話した。日本では弁当やビール、日本酒などを持って花見をするのが一般的だと説明すると、「準備が大変そうで僕らにはまねできない。酒も飲めないしね」と肩をすくめた。

 米国の大半の州では、屋外での飲酒を禁止している。ワシントンDCの法律では、許可なく屋外で飲酒した場合、1000ドル以下の罰金か、60日以下の懲役となる。

 米国人の屋外での飲食といえば、弁当よりもバーベキューが一般的。しかし、大半の公園内では火器を使った調理を禁じている。

 桜の木を見渡せる芝生に座り込んでいたスティーブン・ソイードさん(37)に、飲酒をする日本の印象をたずねると「いいんじゃないかな。日本は深く桜を楽しもうとしているんだろう。美学の違いだ」と話した。「僕は家族と一緒にただ花を見ているだけ。子どもも喜んでいるよ」 (ワシントン・石川智規、写真も)

大好物のドリアンにご満悦の来園者

写真

◆タイ ドリアン食べ放題

 タイの首都バンコクの東南、車で二、三時間のラヨーン県は、観光果樹園でトロピカルフルーツの食べ放題が楽しめる。

 果樹園はフルーツの王様「ドリアン」が旬に差し掛かる四月ごろから、次々オープンする。ソンクラン(タイ正月)の十三日に開園したスワン・ルン・トンバイ(トンバイおじさんの果樹園の意味)は初日から家族連れでにぎわっていた。

 ドリアンのほか、ランブータンやマンゴスチン、ロンガンがかごにどっさり。えんじ色の外皮に細かいとげが生えた「サラク」という耳慣れない果物もある。

 日本ならレアで高級な果物たちが、同園では一人四百バーツ(約千四百円)で食べ放題。子どもは半額、幼児は無料だから、日帰りレジャーにうってつけだ。

食べ放題の南国フルーツ。手前右のかごはドリアン、左のかごはランブータンなどが山盛り=いずれもタイ・ラヨーンで

写真

 硬い突起に覆われたドリアンは、スタッフが包丁で切り開いてくれる。黄色い果肉はクリーミー。バターのようなコクと適度な甘みが詰まっている。「腐ったタマネギ」とも表される独特のにおいは、取れたてで屋外のせいか気にならない。

 「くさい? 熟したいい匂いよ」。バンコクからきょうだいらと計六人で来たユラポーンさん(49)は笑う。好物のドリアン目当てで二年連続の来園だ。

 「体を温めるドリアンの次はこれ」とスタッフに勧められたのは、体を冷やすというマンゴスチン。みずみずしい甘みは、濃厚なドリアンの後にぴったりだ。

 トラクターに連結された客車に乗り、さまざまな果物がなる木々の間を巡るツアーも用意されていた。

 「日照と風通しに恵まれたラヨーンは果物栽培に適している」とオーナーのソムヨットさん(58)。ドリアンを頬張る来園者に目を細め「この辺りも工場が増えてきた。十年後はどうなっているかな」。

 (ラヨーンで、北川成史、写真も)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報