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【暮らし】

上下関係、忖度…意見出にくい日本人組織 求む 外国人正社員

民族衣装などを着て記念写真に納まる外国人の新入社員ら=愛知県豊橋市で

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 日本で外国人を正社員として採用する企業が増えている。千載一遇のビジネスチャンスをものにしたり、重大な誤りに対処したりできる組織をつくるには、文化も発想法も異なる人がいることがプラスという考え方が広がっているためだ。その先頭を走る一社を訪ねた。(三浦耕喜)

 壇上にインドネシア・バリ島の民族衣装をまとった女性が進み出た。デワ・アユ・ラダ・スワリさん(22)。流ちょうな日本語で言う。「自分の意思を強くし、想像力を働かせ、将来、地元の子どもたちのため、バリ島に学校をつくります」

 チョゴリ姿の韓国人女性、チェ・ミンジさん(23)は「ここで学んだことを、韓国・アジアに広げたい」。中国人男性の朱学良(28)さんは「今日から私は変わります。まずは基礎を学びます」。

 一日、愛知県豊橋市内のホテルで行われた外食チェーン「物語コーポレーション」(同市)の入社式。新入社員百三十三人が壇上で抱負を語る。

 うち二十七人が「インターナショナル社員」と呼ばれる外国人。「各国の正装での参加可」の案内に、外国人新入社員は皆きらびやかな装い。対して日本人は男女とも黒のスーツばかり。

 「インターナショナル社員たちが、日本人社員たちをどうかき回してくれるか」。期待を込めて見つめるのは、代表取締役会長の小林佳雄さん(69)だ。一九四九年に一軒のおでん屋からスタートした同社は、「丸源ラーメン」「焼肉きんぐ」などの看板のブランド店を展開。グループ店舗数は約四百五十を数える。

 成長の理由はさまざまだが、小林さんが意を用いたのは人事だ。米国に留学した体験から、日本人の考え方が時に成長を妨げることを見抜いていた。「日本人だけで話しても意見が出てこない。先輩・後輩、上司・部下の上下関係、それこそ『忖度(そんたく)』も働く。サービスの質も商品も良くならない」と小林さん。

 十年前に中国人を一人採用した。待遇も責任も日本人社員とまったく同じだ。以来、徐々に増やしてきた。物おじせず、どんな意見も口にする外国人社員。すでに直営店の店長を任される人材も出てきた。「すると、日本人社員も変わるのです。気付いたことは何でも言っていいのだと」

 近年、日本企業が信用を落としたのもその部分だ。三菱自動車の燃費不正問題では、若手の異論を上司が聞かなかったことも要因に挙げられている。東芝の不正会計問題もしかり。組織を優先して個人の気付きを軽視したことが、取り返しのつかない事態につながった。それを防ぐため多様な人材を入れる。モラルの問題ではない。予測不能の時代に企業が生き残る戦略なのだ。

 入社式のあいさつで加治幸夫社長(61)は明言した。「当社は組織の尊厳より個の尊厳を上位に置く。皆さんは、やってはならないことを拒否する権限がある」

 ローソンも積極的に外国人を社員採用したパイオニアだ。本格採用を始めた二〇〇八年から数えると、今年までに新卒採用計千四百七十人中、二百七十一人が外国人だ。二割を占める。ほぼ日本人の、ほぼ男性だけで意思決定してきた雰囲気は変わったという。「海外、広報、人事などのほか、管理職に昇格した外国人もいる」と同社広報室。

 法務省入国管理局によると、日本企業に就職した外国人留学生は〇六年が約一万三百人だったのに対し、一六年には約一万九千四百人と、ほぼ倍増している。

 新たな発想を外国人に期待する日本企業。日本の学生の発想力が問われる。

 

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