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【暮らし】

<年金プア 不安の中で>80代女性 年金は月6万円ほど、生活費払えず 不足分は生活保護利用可

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 公的年金の受給額が少なくて困窮している高齢の年金プアが最後に頼ることができるのは生活保護だ。しかし、制度内容の誤解から、生活保護を受けられる資格がありながら利用を控えるケースが目立っている。年金と生活保護の関係を整理して考えてみよう。 (白井康彦)

 東海地方に住む元県議の七十代男性Aさんは、生活保護と年金の関係を誤解している国民が多いことに心を痛めている。「年金が少ない高齢者から『年金より生活保護の方が受給額が多いのはおかしい』とよく言われる。単純に比べられないのに、そこがなかなか分かってもらえない」

 ずっと自営業者として働いて国民年金に加入してきた人が受け取る老齢基礎年金の月額は、満額でも六万四千九百四十一円。一方、生活保護費の月額は、家族構成や居住地などでさまざま。名古屋市のホームページによると、同市では「モデル世帯の最低生活費」という表現で示されており、六十八歳で一人暮らしの場合は、生活扶助が七万九千七百九十円、住宅扶助が三万七千円となっている。

 生活扶助は日常生活費に充てる給付金。住宅扶助は、実際の家賃の金額を支給し、三万七千円は上限額だ。この名古屋市のケースでは生活扶助と住宅扶助の合計月額は十一万六千七百九十円。これと満額の老齢基礎年金の月額を比べて「生活保護費の方が随分多い」と不満を口にする高齢者が多い。

 年金と生活保護費の違いについて政府は国会審議などでたびたび答弁してきた。強調しているのは趣旨の違い。老齢基礎年金は生活費のすべてを賄うための給付ではなく、貯蓄や労働による収入なども活用して暮らす想定だと説明する。

 これに対し生活保護は、資産が乏しく貯蓄がほぼ底をついた人が対象で、収入が少ない人に「健康で文化的な最低限度の生活」を送るための不足分を支給する。最低限度の生活に必要な費用の基準が最低生活費で、政府が定める。

 年金プアの生活費の原資は、年金と貯蓄、労働による収入、親族からの支援金などだ。貯蓄が底をついてしまえば、その分を生活保護の利用で賄うことになる=図。最低生活費を満額受給できるのは、年金がなく、労働による収入や親族からの支援金もない人に限られる。

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 Aさんの家の近くの借家で一人暮らしをする八十代のB子さんは、公的年金の月額が約六万二千円。二年前に亡くなった夫と一緒に繊維関連の自営業を営んでいたが、経営は苦しく、貯蓄は乏しかった。そして、夫の死からまもなくして貯蓄が底をついた。

 B子さんによると、家賃は三万二千円で、日常生活費は八万円ぐらい必要だった。収入は年金しかないため、約五万円の赤字分は娘から援助を受けていたという。しかし、娘の家族は子どもが三人いる上、住宅ローンも抱える。約五万円の支援は負担が重く「これ以上、娘にお願いするわけにはいかなかった」とB子さんは話す。

 悩んだ末にAさんに窮状を訴え、それがきっかけで市役所に生活保護の利用を申請。今年三月から受給できるようになった。B子さんの最低生活費は、生活扶助の約六万七千円と住宅扶助(家賃)の三万二千円で合計約九万九千円。そこから年金収入の約六万二千円を差し引いた約三万七千円が生活保護の受給額だ。

 「受給できるかどうか不安だった」とB子さん。娘から受けていた援助金に比べ受給額は一万三千円少ないが、生活保護の利用で医療費の負担がなくなり、B子さんは「病気がちなので、そのメリットは大きい。生活が安定しました」と話した。

 

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