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【暮らし】

企業の新人研修 脱「詰め込み」プログラム 「正解のない」課題で判断力、センス磨く

タブレット端末を使いながら課題の答えを議論する新人=東京都千代田区で

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 社会人としてのマナーや心構えを身に付ける新人研修。これまで名刺交換や電話のかけ方など具体的な対応の仕方を学ぶ「知識の詰め込み」が定番だったが、最近は自分で考え、判断する力を磨く「正解のない」研修が登場し、注目を集めている。 (寺本康弘)

 東京駅近くのビルの一室で、今月中旬に開かれた新人研修。オフィス緑化やギフトフラワーを扱う「第一園芸」(東京都品川区)の新入社員二十二人が四グループに分かれ、タブレット端末を囲んで議論した。

 画面に映し出されるのは仮想の職場。そこに配属された新人として、暑気払いの飲み会を設定するという課題に挑戦した。

 仮想の上司や先輩が語る都合や要望は「ビールが飲みたい」「子どもの迎えでその日は行けない」「課長はカニアレルギー」とばらばらだ。全員の都合や要望を反映することはできない中で、日時や場所を調整。参加した新人は「どうしよう」と困惑しつつ、議論しながら答えを出した。

 ただ、この課題に正解はない。「どうしてその結論に至ったのか、理由を説明し、考えを深めていくことが大切なんです」。研修プログラムをつくった産業能率大総合研究所(世田谷区)の開発リーダー、川口啓さん(51)が説明する。

 他の課題には▽上司に朝どのようにあいさつするか▽出張中の先輩へのメールの文面をどうするか−などがあり、相手の立場や状況を考慮して判断する。「通り一遍の対応を覚えるだけでは応用できない。現場で必要な『仕事センス』を磨くのが、このプログラムです」と川口さん。

 研修プログラムが登場する背景には、現在の企業が置かれた状況が反映されている。社内で若手を育成する人員や時間的余裕がない一方、新人には即戦力としての期待がかかるためだ。

 前出の「飲み会」では、先輩から不満をぶつけられるという後日談もある。これは、社会人になって直面する厳しさや不条理の疑似体験。結果が悪くても深刻に受け止めすぎず、過程を重視して成長につなげる効果も狙っている。

 参加者は「一人一人価値観は違う。期待する反応が得られなくてもストレスと感じないようにしたい」と話した。

◆若者の長所引き出して

 若者の特性に合わせ、新人教育も変わってきた。リクルートマネジメントソリューションズ(東京都品川区)の主任研究員、桑原正義さん(48)は、最近の若者の課題として「失敗や否定を恐れて思い切って行動するのが苦手」「相手より自分の基準で考える」を挙げる。

 背景には、学校教育で不条理な経験をする機会が少ないことが考えられるという。苦手の克服より、長所を伸ばす方に重点が置かれていることなどが影響していると分析する。

 昔の新人も失敗や否定を恐れたが、それでも行動する思い切りがあった。新人研修では課題に取り組ませて徹底的に「ダメ出し」をし、厳しさを味わわせて学生気分を抜き、社会人としての気構えを持たせた。

 しかし「厳しさに慣れていない今の若者に対し、それは逆効果」と桑原さん。「学んで考える力やまじめにやる力、ひた向きさは、今の若者の方が強い。指導する側も、古い考えのままでは若者を生かせないと知り、良さを引き出す教育をしてほしい」と話す。

 

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