東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 5月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

世代超えホンネ交流 83歳・溝井さんのツイッター人気

ツイッターのフォロワーが9万人いる溝井喜久子さん。つぶやきをまとめた本も出版された=埼玉県東松山市で

写真

 八十三歳の女性のつぶやきが九万人から注目されている。埼玉県東松山市の溝井喜久子さんは、インターネットの短文投稿サイト「ツイッター」を七十五歳で始め、毎日何十回もつぶやく。その内容は季節感豊かな日々の食事だったり、ネットで交流する若い世代の本音を踏まえた高齢世代への一言だったり。読む人たちに癒やしや励ましを発信しつつ、溝井さんもまた、多くの人たちに元気をもらっている。 (細川暁子)

 タコと庭でとれたニラの炒め物、サバの甘露煮−。夕食の写真を投稿すると、「こんばんは☆いい匂いがしてきそうですね」。溝井さんの投稿を見られるように登録している「フォロワー」からのメッセージだ。

 「若い世代とメッセージを送り合うと元気になるし、毎食の写真を投稿すると料理する張り合いも出る」と、溝井さんはほほ笑む。

 ツイッターを始めたのは、友達が企画したイベントを周知しようとしたのがきっかけ。大学の理学部を卒業し、機械類に抵抗感はなかった。六十代からパソコンも使っていた。しかし、端末を操作できても、多くの人が投稿を見てくれるわけではない。最初のころは何の反応もなかった。

 変化が表れたのは、始めて三カ月したころ。「ツイッターを使う若い世代に向けて、発信できることは何だろう」と考えてからだ。若い世代の人たちに、自分が伝えなくてはならないことを考えると、それは戦争のことだった。

 十歳のころ、埼玉県内の自宅の庭で戦闘機から狙い撃ちされる「機銃掃射」にあった。難を逃れたが、知り合いの中には家族を失った人もいた。その体験を投稿していくと、フォロワーは五千人ほどに増えた。

 二〇一五年七月には、胃がんで夫が亡くなった。二人の息子は離れて暮らしており一人暮らしに。「もちろん悲しいけれど、一人の自由な時間ができたと思うようにした」。ツイッターは息子の家族も見ており、自分が元気でいることの証しにもなる。

 真夜中に目が覚めてつぶやくと、海外在住の日本人がメッセージをくれることもある。「一人暮らしになっても、いつも誰かが自分を気に掛けてくれる」。ときに心が温かくなるようなメッセージをもらい、返信してという交流を続けていると、フォロワーは九万人にもなった。

 「今のお年寄りには、子どもに世話されるのを当たり前と考えている人が多い」とつぶやいたこともある。介護やしゅうとめとの関係についてフォロワーたちから相談されるうちに、子どもの思いを親たちに知ってほしいと思ったからだ。すると、子どもの世代から「代弁してくれてありがとう」という声が多く寄せられた。

 「自立して一人で暮らしている溝井さんだからこそ、お年寄りへの苦言も言える」。フォロワーの一人で、出版社「ユサブル」(東京都)に勤務する赤坂竜也さん(53)は、こう言う。「四十〜五十代の子ども世代は、自分たちの気持ちを溝井さんが代弁してくれている気がするのでは」と話す。二月には、これまでの投稿や書き下ろしたエッセーをまとめた本が同社から出版された。

 溝井さんにとってツイッターを通じた交流は大切だが、実際に顔の見える付き合いも重要。ツイッターを通じて知り合った三十代や四十代の人たちが、家を訪ねてくることもある。近所でも、お茶などの講座には毎週参加し、参加者たちを自宅に招いてランチ会を開く。

 「ツイッターでも地域でもおしゃべりする友達が大勢いる。一人暮らしでも全然寂しくないし、不安もありません」

       ◇

 溝井さんのエッセーやつぶやきをまとめたのは「キクコさんのつぶやき」。嫁しゅうとめの関係やセックスレスなど、多くの相談を受けた家庭内の問題を中心に編んだ。四六判196ページ。1512円。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報