東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 5月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

注目の「オンライン診療」 通院中断解消や難病治療に効果

オンライン診療で女性患者と話す「いつき会ハートクリニック」院長の佐藤一樹さん=東京都葛飾区で(一部画像処理)

写真

 パソコンのテレビ電話機能やスマートフォンなど、情報通信技術(ICT)を活用して医師が患者を診る「オンライン診療」が注目されている。忙しさから通院を中断してしまう生活習慣病の患者を減らしたり、専門医の少ない難病患者の受診機会を増やしたりする効果が期待される。 (竹上順子)

 東京都葛飾区の「いつき会ハートクリニック」。院長の佐藤一樹さん(54)がパソコン画面の女性に「こんにちは」と呼び掛けて診療が始まった。

 女性は五十代で高血圧と高脂血症がある。佐藤さんは、女性が毎日測っている血圧の数値を聞いて「頭痛や動悸(どうき)はないですか?」などと質問。問題ないと分かると「いつもと同じお薬で大丈夫。処方箋を郵送しますね」と伝えた。

 心臓血管外科専門医の佐藤さんがオンライン診療を始めたのは、昨年十一月。演歌歌手の通院患者が、地方公演中に突然死したのがきっかけだった。多忙でなかなか来院できず、薬を持たないまま地方公演に出掛けたという。二〇〇九年の開業以来、高血圧など生活習慣病患者を多く診てきたが、仕事で受診できずに服薬が途切れ、病状が悪化する例はほかにもあった。

 オンライン診療は、以前からの通院患者のうち六人が利用を希望し、定期的な受診につながった。佐藤さんは「忙しい人ほど、生活が乱れて病気になりやすい。こうした取り組みの必要性を訴えていきたい」と話す。

 オンライン診療は今年四月の診療報酬改定で、初めて報酬が設定された。情報通信機器を使い、患者と医師がリアルタイムのコミュニケーションを取れることなどが条件。初診は原則として直接の対面診療で、他に三カ月に一度は対面診療をすることなどが求められている。

 対象となるのは生活習慣病のほか、てんかん、難病外来に通う人、精神科の在宅患者など。通院時間が取れない患者の治療中断を防いだり、医師の訪問診療の負担を軽減したりすることを目指す。三月には実施の指針も公表された。

 オンライン診療のルール整備の背景には、情報通信機器を使った診療の広がりがある。医師法は医師が直接診察しない治療を禁じているが、厚生省(現厚生労働省)は一九九七年の通知で、特定の疾患や離島などで「遠隔診療」ができるとした。地域の制約をなくした二〇一五年が事実上の解禁とみなされ、医療機関にシステムなどを提供するIT企業が増えた。

◆専門医の受診が容易に

 難病治療にも効果がある。国際医療福祉大三田病院(東京都港区)は二〇一六年、通院が難しい「肺高血圧症」患者を対象に、テレビ電話などを使った診療を始めた。肺動脈の血圧が異常に上がり、心臓や肺に障害をもたらす難病で、国内の患者は約三千人。専門医が非常に少なく、同病院肺高血圧症センターには北海道など遠方からも患者が通う。

 同センター代表で同大准教授の田村雄一さん(39)によると、治療は主に薬による症状のコントロールで、受診は原則月一回。三カ月に一度しか受診できなかった遠方の患者も、テレビ電話の診療で受診回数を増やすことができた。

 多機能の携帯型心電計も導入。患者が計測するデータをオンライン化することで医師と共有し、薬の用量調整などがスムーズになった。患者が不調を訴えたときも、医師は客観的なデータを基にした的確な判断ができ、治療効果が上がっている。

 通信アプリによるサポートもある。患者の問い合わせに、医師らがこまめに返信。重症患者の中には二十四時間カテーテルで薬を投与し続ける人もいるが、小さな心配事でも相談でき、安心感が高まったという。

 オンライン診療の広がりについて、田村さんは「難病治療では専門医への受診機会を増やせるだけでなく、診療の『密度』を上げられることが利点」と話す。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報