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【暮らし】

子や親族に頼らず「老後」に備え 委任契約制度、活用を

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 子どもはいない、いてもあてにならない−。自立した生活ができにくくなる老後、さらには葬儀など死後のことも思い、こんな不安を抱くことはないだろうか。頼れる子どもや親族がいなくても、信頼できる第三者といくつか任意の契約を結んだり、遺言書など公的な書類を用意したりして、元気なうちから「そのとき」に備えておきたい。 (白鳥龍也)

 東京都大田区の女性(74)は百三歳の実母の在宅介護をして十九年になる。「早くに離婚して女手一つで育ててくれた母は最期までしっかり面倒を見るつもりだが、独身の私が母のようになったら誰が世話してくれるのか。介護や入院の手続き、財産管理、葬儀、埋葬…。全部が不安。一括して解決できる方法はないかしら」

 女性からそんな相談を受けたのは、一般社団法人「マイライフ協会」(東京都)代表理事で行政書士の児玉浩子さん(42)。協会は、大東文化大大学院で法律を学んだ児玉さんらOB・OG有志が高齢者問題の勉強会を開く中、法的対応を含む総合的な生活支援団体がないことに気付き「ないなら自分たちで」と二〇一六年に設立。困り事全般の相談・支援を受け付けている。

 児玉さんによると、身近に頼れる家族がいない高齢者に必要な支援は、体や脳の機能低下に合わせて(1)自立(2)身体能力低下(3)判断能力低下(4)死後−と四つの期間に分けて考えることができる。

 (1)は、定期的な安否確認や生活相談サービスがあるといい。(2)は判断能力に問題はなくても、体力の衰えで金融機関まで行けなくなった場合で、預貯金の引き出しや光熱費の支払い、自宅の修理などの財産管理が求められる。(3)はさらに判断能力も低下した場合で、財産管理に加え、医療や介護に関する契約が重要になってくる。

 (4)は葬儀や埋葬、遺品整理をしてもらい、財産相続に関して遺言が執行されれば安心だ。遺言書は勝手に書いても有効になるとは限らない。公証役場に出向いて作成してもらう公正証書遺言を用意したい。

 このうち自立期以外の支援を受けるには、第三者と法律に基づく委任契約が必要。判断能力低下時の契約は「任意後見」、死亡後は「死後事務委任」と呼ばれる=図。

 似た制度に民法の「成年後見」制度がある。本人の判断能力に問題が起きたときに、本人または親族による申し立てを受けた家庭裁判所が弁護士や司法書士らを選任する。ただ、大東文化大名誉教授で同法に詳しい片山克行さん(70)は「認知症になった後に本人が申し立てするのは難しく、といって親族もいなければ利用しにくい。意に沿わない人が選任される可能性もある」と指摘する。

 そういう場合は、「任意後見」制度を活用するといい。利点は、認知症などになる前に信頼できる人と契約を交わせること。実際に任意後見が始まるのは、本人の判断力が衰え、後見人予定者や親族らが家裁に申請し認められた後になる。

 ただ任意後見を引き受けた第三者が行えないのが、医療行為に対する同意。無用な延命治療を望まないのであれば、事前に「尊厳死宣言公正証書」といった本人の意思を示す公的な書類を用意する。

 児玉さんは「エンディングノートを書いた、葬儀社と生前契約したから、では駄目。ノートや契約内容を誰も知らなかったり、その通りにしてくれなければ意味がない」と、法制度にのっとった準備を勧める。契約したい第三者のあてのない場合、相談窓口はいくつかあるが、シルバービジネスの一環で高額な料金を取る業者もあることから「契約先選びは慎重に」と呼び掛けている。

 

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