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【暮らし】

A型事業所 利用者の労働時間、国の給付金に影響 短時間勤務者切り捨ても

アンテナショップで販売する商品の売れ行きを確認する施設関係者ら=名古屋市北区で

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 一般就労が難しい障害者が働く就労継続支援A型事業所(A型)。昨年、岡山県倉敷市や名古屋市などで事業所の破綻により利用者が一斉解雇され社会問題になったが、現在も多くのA型が経営に苦しんでいる。四月からは、利用者の勤務時間が給付金に反映されるようになり、短時間しか働けない障害者が働く場が狭まるという懸念もある。そんな中、愛知県内のA型などが協力して販売や受注を進め、経営を安定させる取り組みが始まった。 (出口有紀)

 机の上には、緑、黄色、ピンクなど色とりどりの縄跳びの縄。手足などに障害のある男性が、縄に部品を取り付けて組み立てる作業を、着々と進める。

 男性は、名古屋市北区のA型「コアラ」の利用者。天野奈美子代表は、手際よく仕事する男性を見守りながらも表情を曇らせる。この内職は、春から夏にかけては減っていく時期だ。「夏場は利用者がする仕事が足りなくなる。増やしたいけれど…」

 A型をめぐっては、一部の事業者が国からの給付金を頼りに、仕事の確保などの経営努力を怠っていることが問題視され、国は昨年春、給付金を利用者の給料に充てないよう指導の強化を各自治体に通達した。また、以前は勤務時間を短くすることで時給制の利用者への給与を抑えるA型もあったため、四月の報酬改定では、事業所への基本報酬に利用者の労働時間の実績を反映させるようにした。

 多くのA型が受注増による経営改善を急いでいるが、受注や販路の確保は難しい。国が三月に公表した調査結果では、設立から日が浅いA型を中心に、全国の七割が赤字だった。

 コアラは二〇一一年に設立。現在、利用者は十八人。そのうち五人は病院の清掃をしているが、他の十三人がするのは単価が抑えられがちな内職。経営は赤字で、事業所を設立した際の借金もある。天野さんが販路開拓などに努めるが「名刺を出しても、障害者の事業所と分かると門前払いされることもある」という。

 反対に、仕事を増やすのをためらう事情もある。精神面が不安定で、急に働けなくなってしまう人もいる。「受注しても、納期までにできるか読めない」

 四月の報酬改定で、短時間勤務の人が多いA型では国からの給付金が減った。となると、A型と新たに雇用契約を結べるのはフルタイムで勤務できる人が優先され、障害によって短時間しか働けない人は後回しにされかねない。「働く場がない人のためのA型なのに、売り上げを強調されると、そうした人たちを引き受けられなくなる」と天野さんは訴える。

◆施設連携、共同で仕事受注

 愛知県では、県内のA型でつくる「Aネットあいち」を主体に、今春、一般社団法人「愛知障害者就労共同受注販売センター」が設立された。各施設の製品を共同販売し、内職や施設外就労などの仕事も受注し、施設に紹介する。

 名古屋市北区の団地「大曽根住宅」内に今春、整備された住民交流スペースの一角に設けられた法人のアンテナショップ「みんなのわ」で販売。A型での就労が困難な人が働くB型も含め約四十事業所で作った焼き菓子や布製品などが並ぶ。

 店長で大手商社で営業を担当した和田邦康さん(60)が、各事業所とともに仕事の受注に努める。多くのA型やB型で内職が受注の中心となっている。「個別に仕事を請け負うと、単価が安くなりがち。受注の窓口があると、本当にこの金額でその仕事が受注できるかも判断できる」と話す。

<就労継続支援A型事業所> 障害者が雇用契約を結んで働き、最低賃金以上の時間給を得る。障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)が施行された2006年に制度が設けられた。営利法人の参入が認められたこともあり、13年4月の全国約1600カ所から17年4月には約3600カ所に急増。同年8月には、名古屋市北区の「障がい者支援機構」が経営破綻し、同社運営のA型6カ所の計約150人が解雇された。

 

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