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【暮らし】

伝統野菜「種」から保存 大量生産に不向き、農家減少

愛知大晩生キャベツなどの伝統野菜を育てる高木幹夫さん=愛知県大府市で

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 各地で昔から育てられてきた伝統野菜。品質が安定せず大量生産に適さないことなどで、途絶えてしまった品種もある。しかし、食は地域を特徴付ける要素の一つ。消えゆく野菜を残すことで地域を守ろうと、伝統野菜の種取りに奮闘する団体もある。 (出口有紀)

 「よく育ってくれたなあ」。愛知県内の農家でつくる「あいち在来種保存会」代表世話人の高木幹夫さん=大府市=は目を細める。年間を通して栽培しているのは「愛知大晩生(だいばんせい)キャベツ」「渥美白花絹莢(しろばなきぬさや)えんどう」「方領(ほうりょう)だいこん」など約三十種類。いずれも県が認定する「あいちの伝統野菜」だ。

 保存会は二〇一三年に農家や料理人らと設立。現在は高木さんと農家の仲間二人が、伝統野菜の種を取っている。地元の農協に勤めていた高木さんは、伝統野菜が栽培されない状況を心配し、一九八五年ごろから地元の種を中心に集めていた。「愛知は古くから農業が盛んだけれど、伝統野菜を作る農家はほんの一握り。種を残さないと、消えてしまう」。現在は種取りが主な活動だが、保存会員のレストランなどに販売することもある。

 伝統野菜はほぼ全国的に廃れつつある。形がふぞろいで大量生産には向かず、病気に弱い品種が少なくないからだ。種苗会社が複数の種を掛け合わせ、市場の規格に合った野菜を大量生産しやすくした「F1種」という品種が、どの野菜でも大多数を占めている。京都の京野菜や石川の加賀野菜などは知名度が高いが「聖護院かぶなど、後から開発されたF1種が主流になり、原種を作る人が減ってしまった例もある」。

 農業者の高齢化も先細りに拍車をかける。例えば、大晩生キャベツは大きくて重く、箱詰めや箱を運ぶのが大変だ。大晩生の名の通り種まきから収穫まで約八カ月かかるため、半年ほどで収穫できるF1種より手間がかかる。白花絹莢えんどうも茎の背が低いため、腰をかがめての作業が多く、体の負担が重い。

 種取りも手間が掛かる。葉物や根菜類の場合、収穫する野菜の一部を種取り用に残して、花を咲かせる。枯れるまで放置し、その後、軒下などにぶら下げて乾燥させ、種をさやから取り出す。一方、F1種は一代限り。毎年、種苗会社から種を買うため、種取りの必要はない。高木さんも「F1種が選ばれるのも仕方ない」と思う。

 しかし、その土地でしかつくれない伝統野菜の味を知ってほしいという思いは強い。「大晩生キャベツは硬いが、焼きそばに入れるとシャキシャキした食感がある。方領だいこんは傷みやすいが、煮込むと甘みがある」。伝統野菜を生かした料理は土地ごとにあり、それが郷土の味。「その土地に合うように作られてきた野菜は、地元で作って味わってこそ。これが本当の地産地消ではないか」

 農家が先祖代々、種取りをして育ててきた野菜などを「古来種野菜」として、発信する取り組みもある。全国の農家約九十軒から集めた古来種野菜のみを扱う会社「warmerwarmer(ウォーマーウォーマー)」(東京都武蔵野市)代表の高橋一也さん(47)は「現在は野菜の流通量の1%にも満たないが、F1種にはない香りやうま味、その土地の歴史、文化がある。食卓の一皿を古来種野菜にすることで、そういったものも守っていきたい」と話す。

 全国の約三百種を扱い、東京の百貨店の伝統野菜のコーナーで売り出しているほか、同社のインターネットサイトで通信販売もしている。

 

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