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【暮らし】

<くらし調査隊>47年間入居 退去時の修繕費払う? 消耗品負担 指針あいまい

送られてきた3人の弁護士連名での「催告書」(一部画像処理)

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 賃貸住宅から退居する際、入居者と家主がもめることが少なくないのが修繕費の負担。国土交通省は「経年劣化の修繕は家主の負担」との指針を示しているものの、傷みの原因が経年劣化なのかどうかなどで、しばしば主張が食い違う。愛知県内の女性(51)から「私の父母は、四十七年前の状態に戻せと言わんばかりに、修繕費を迫られ困っている」と相談が寄せられた。 (三浦耕喜)

 愛知県江南市の団地。女性はここで育ち、巣立ち、孫を連れて来るようになった。だが、父親は認知症で施設に入り、父親の年金はその費用に消えた。母親の年金では家賃を払っていけず、昨年九月、母親は女性の家に移ることにした。

 新築直後に入居。以来リフォームもしていない。「畳も床も水回りも経年劣化は当然。経年劣化は家主が負担するはず」。敷金は五万五千二百円。故意や過失が原因なら入居者の負担。紛失した鍵の取り換えはやむを得ないが、ある程度は敷金が戻ると思っていた。

 だが、届いた請求書は八万二千八百九十七円。敷金では足りず、さらに支払いを求められた。女性は「入居当時の原状回復を前提にしている」と受け止めた。一番値が張ったのは、ふすまの紙の張り替え。和室の多い昔の間取りで、十枚分を請求された。自分なりに修繕していたが、団地側が定める仕様に合っていないという。「五十年前のふすま紙なんてどこにあるのですか」と女性は言う。

 女性の主張は一部が聞き入れられたが、それでも敷金を超える。やがて、団地側は不足金を債権として保険会社に譲渡。今年三月、保険会社から「催告書」が弁護士三人の連名で届いた。「もう面倒だから払おうか」と揺れる母親。しかし、女性は納得できない。

 管理運営会社に聞いた。担当者は「国交省の指針通りに査定した」と指針を示す。「ふすまや障子の紙は消耗品の性格が強く、汚損を発生させた借り主が負担するのが妥当」とあった。

 だが、敷金診断士の浅井世郎さんは指摘する。「国交省の指針には、こうも書いてある。『使用可能期間が一年未満、または取得額が十万円未満のものは消耗品とし、必要経費として処理できる』と。家主側の必要経費なので、月々の家賃に含まれる」

 消耗品をどちらが負担するのか。国の指針には、あいまいな部分が多い。ただ、浅井さんは「退去時の修繕費として徴収したのを、家主の二重取りとした判例もあります」と教えてくれた。

 入居者が高齢化し介護が必要になれば、施設入所などで賃貸住宅から退居する。そんな世帯が増えれば「大量退居」の時代がやって来る。「現在の指針は高齢者の事情を十分勘案していない。高齢化社会に合わせた指針作りこそ急務」と浅井さんは話す。

 

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