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【暮らし】

<食卓ものがたり>臭みなくし ご褒美の味 保美豚(愛知県田原市)

「いい状態に育って出荷を迎えられるとうれしい」と話す吉田幸伸さん=愛知県田原市で

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 分厚いロースやヒレは滑らかな口当たりで、さっくりかみ切れる。脂身からもじんわりと甘みが広がり、臭みがない。

 愛知県田原市保美(ほび)町の畜産農家吉田幸伸さん(39)が育てる保美(ほうび)豚。「ご褒美のときに食べてほしい」との願いを込め、町名にあやかって名付けた。今や田原市の地域ブランドとして、ふるさと納税の返礼品の一つとして扱われる。

 昔からこの品質だったわけではない。創業は一九五三年。祖父が始めた当初は、肺炎などの予防のため、生後すぐに抗生物質を与える通常の飼育法だった。

 転換したのは十年前。品質や安全性を向上させるため、抗生物質が入っていない飼料に切り替えた。海外から輸入される安い豚肉に、品質で対抗しようと思ったのがきっかけだ。

 ノウハウはない。まず飼料会社に抗生物質の入っていない飼料を作ってもらい、弱った豚でも注射をすることはなかった。当初は死亡率が上がり、ひどいときは20%に達することもあった。赤字が膨らみ、くじけそうになったが、従来の方法に戻すことはなかった。

 試行錯誤は続く。脂身の甘みを増やすオレイン酸を多く含む米や麦、抗菌作用があるカシスの粉末を乳酸菌や納豆菌入りの飼料に加え、胃腸を強くした。「腸から発生するガスを少なくすれば、臭みが全身に巡らなくなる。コストもかかり手間もかかるが、効果は大きい」と吉田さんは話す。

 風通しがよく、やわらかな光を感じられる豚舎からは「ブッ、ブッ」と、元気のいい鳴き声が響いた。吉田さんの気配を感じ、出荷を一カ月後に控えた生後五カ月の豚が、鼻を寄せて近寄ってくる。「肉付きがよく、毛並みもいい。のびのび育てる環境を保ち、健康に育ってほしい」。いとおしそうに見つめた。

  文・写真 出口有紀

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◆味わう

 保美豚は、愛知県田原市で無農薬野菜などを扱う通販サイト「そらの野菜」=http://www.muhiryou.com=で販売。

 名古屋市中区の保美豚専門の料理店「ポークレストラン岳家(がくや)」では、保美豚のソテー=写真=などが味わえるコースを提供。昼は1814円、夜は4104円から。オーナー藤川功介さん(44)は「熱を通しすぎると肉がぱさつくので、調理法や温度は何十回と実験した。家庭でも火を入れすぎないで」と話す。(問)同店=電052(212)7385

 

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