東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 6月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

高齢者の身元保証サービス 入所や入院時の心強い味方

身元保証サービスを契約し、法人の担当者(奥)と契約内容などを確認する女性=名古屋市中村区で

写真

 家族がいない高齢者らの身元を保証するサービスが広がっている。会員となった高齢者から事業者が一定の金額を預かって、施設入所の際に身元保証人となるほか、施設や医療機関への費用の支払いに連帯責任を負ったりする。一人暮らしの高齢者には心強いサービスだが、二〇一六年には同様のサービスを提供していた「日本ライフ協会」が破綻するなどの問題も起きており、有識者らから法整備を求める声も上がっている。 (細川暁子)

 名古屋市内の女性(77)は三年前、身元保証サービスを提供する東京都のNPO法人「りすシステム」と契約した。女性は夫(82)と二人暮らしで子どもはいない。

 最初に身元保証人の必要性を感じたのは、十年前。夫が膵臓(すいぞう)がんになり、手術や入院の同意書に身元保証人の署名を求められた。この時、ふと思った。「もし夫が先に亡くなったら、誰が私の身元保証人になってくれるのだろう」。夫婦ともにきょうだいはすでに他界。めいやおいがいるが、迷惑はかけたくない。

 夫の病状は安定し、今は自宅で暮らしている。しかし、夫が他界した後の施設入所を考え、いくつかを見学するうち、入所申し込みにはほとんどの施設で身元保証人の署名が必要だと知った。見学に訪れた市内の特別養護老人ホームで偶然開かれていた同法人の説明会を聴き「自分に必要なのはこれだ」と感じた。

 同法人が提供するサービスには、介護施設の入所や入院、手術の際の身元保証だけでなく、死亡後の遺体の引き取りや葬儀、納骨、遺品整理などの「死後事務委任」も含まれる。公正証書を作成し、申込金や預託金など計約百七十万円を用意して契約した。「いつでも相談もできるし、緊急時には駆けつけてもらえる。これで一人になっても大丈夫だと、気が楽になった」と話す。

 同法人は一九九三年の設立。会員は現在、全国の約三千四百人で、ここ三年で千人ほど増えたという。

◆幅広い業種の企業が参入

 淑徳大の結城康博教授(社会保障論)によると、身元保証サービスを提供しているのは全国の百団体ほどで増加傾向にあるとみられる。福祉分野などのNPO法人が事業者となっているほか、冠婚葬祭、警備保障、小売りといった幅広い業種の企業も参入している。

 こうした事業者の増加は、介護施設入所の際、必ずといっていいほど身元保証人を求められることが背景にある。介護施設は本来、省令に基づき、身元保証人がいないという理由で入所を拒むことはできない。だが、実際は支払いの滞納や遺体の引き取りなどの懸念から、みずほ情報総研の調査では、特別養護老人ホームや老人保健施設の95%超が入所時に身元保証人の署名を求めていた。医療機関への入院や治療でも、身元保証人の同意が必要なことが多い。

 このサービスをめぐっては、日本ライフ協会が迂回(うかい)融資などで預託金を流用していたことが分かり、元役員らが逮捕される事件が発生した。厚生労働省によると、現在も事業者の届け出や認可などの制度は整備されておらず、「実態は把握できていない」という。担当者は「関係省庁と情報交換して何ができるか検討している」としている。

 しかし、その後も死亡した会員から譲り受けた遺産をめぐる脱税などの問題が各地であり、結城教授は「利用者は自己責任で契約しているが、消費者被害を防ぐ仕組みが必要。社会福祉協議会など公的な性質のある機関が身元保証を行うのが理想的だ」と話す。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報