東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 6月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

マンション外壁タイルの浮き 築十数年で想定以上発生

打診棒で外壁タイルが浮いた状況を指し示す下会所豊さん=名古屋市で

写真

 分譲マンションの外壁は、仕上げにタイルが張られていることが多い。マンションの維持管理に詳しい建築士によると最近、築十数年の物件で、タイルの浮きが想定以上に見つかるケースが増えているという。タイルがはがれて落下する事故も相次いでおり、検査を専門家に依頼するなど、先回りした対策を取りたい。 (稲田雅文)

 名古屋市内の十数階建てのマンション。完成から十数年がたち、初の大規模修繕工事のため周囲に足場が組まれていた。工事の設計監理を請け負ったマンション維持管理機構(名古屋市)理事長で、建築士の下会所豊さんと足場を上ると、あちこちの外壁タイルが修理のためはがされている状態だった。

 浮いたタイルが多い八階へ行った。下会所さんが先端に丸い金属の玉が付いている打診棒でタイルを軽くたたいたり、表面をこするように滑らせたりすると、タイルによって音が違う部分があった。「音が違うところが浮いている部分。落下する危険があります」

 修理は、タイルが浮いた部分に樹脂を注入したり、浮いている割合が多い場合は張り替えたりする。このマンションの場合、全体の13%が浮いており、修理に二千万円以上かかる。想定外の出費で、予定していた屋上の防水シートの張り替え工事を延期するなどしてやりくりするという。

 建築の際、外壁タイルは建物本体のコンクリートに下地のモルタルを塗り、さらに張り付け用のモルタルで張る「湿式工法」が一般的。過去はメンテナンス不要と考えられていたが、タイルとモルタル、コンクリートが、日光の熱などで長年膨張と収縮を繰り返すことで材料間に疲労が蓄積し、コンクリートとモルタルの間に隙間ができることが分かってきた。タイルが落下する事故が相次いだため国土交通省は二〇〇八年、湿式工法の外壁タイルは十年ごとの打診検査を義務化した。

 問題は、経年劣化でタイルの浮きが生じるだけでなく、施工不良が原因の場合もあることだ。

 このマンションの場合、築年数から想定される割合を超えており、施工不良が疑われる。外壁タイルは、工期短縮やコストダウンを目的に下地モルタルを省略した「直張り工法」で施工されていた。

 「直張りする場合は、建物本体のコンクリートの表面に高圧の水を噴射するなどして凹凸を付け、より強固に張り付くようにする『目荒らし』をすることが普通なのですが」と下会所さん。大手建材メーカーは一九九〇年代から直張り工法の場合は目荒らしをすることを推奨。だが、このマンションのコンクリートの表面は滑らかで、工程を省いた可能性がある。

 下会所さんは「築十数年のマンションで同じような施工がされているケースがほかにもあり、潜在的に外壁タイルの問題を抱えているマンションは多そうだ」と話す。管理組合理事の男性(68)は「タイルを張る工事に問題があったと思う。マンションの販売会社と話し合いをしたい」と語る。

 マンション購入では、隠れた欠陥があった場合に販売会社に損害賠償請求ができる瑕疵(かし)担保責任がある。ところが十年を超えた物件の場合「請求できる期間を過ぎているため、民法の不法行為責任を追及することになる」と説明するのは、日本マンション学会中部支部長の花井増実弁護士。

 一一年の最高裁判決では、タイルの剥離は通行人らに被害を及ぼす可能性があり「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」と認定。施工不良が立証できれば、完成後、時効までの二十年間は損害賠償を請求できると考えられる。花井弁護士は「壁面ごとにタイルの浮きの割合を計算し、基準より多い部分は修理費用を請求できる可能性は高い」と話す。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報