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【暮らし】

映画「毎日がアルツハイマー」シリーズ最終作 「最期をどう迎えるか」探る

「死をオープンに語ることはとても大切」と語る監督の関口祐加さん=横浜市中区で

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 認知症の母との暮らしを撮ったドキュメンタリー映画「毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル〜最期に死ぬ時。」が七月に公開される。シリーズを締めくくる第三作。第一作は監督の関口祐加(ゆか)さん(61)とアルツハイマー型認知症の母ひろこさん(87)の生活を温かくユーモラスに描き、第二作は認知症の人の人格を尊重する英国のケアを追った。今回は、介護する側の老いにも照準を合わせ、人がいかに最期を迎えるかを考える作品となっている。 (竹上順子)

 二〇一二年に公開されたシリーズ第一作は、〇九年に関口さんがひろこさんの異変に気付き、オーストラリアから帰国して、横浜市の実家で一緒に住み始めた頃から始まる。もの忘れや、できないことが増えていくことに本人も家族も戸惑う中、認知症と診断され介護保険制度を利用し始め、医師の話を聞き、手探りで暮らしをつくっていく様子を記録した。

 第二作は一四年の公開。「母との小さな世界を飛び出し」(関口さん)、より広いケアの概念を学ぼうと英国を訪れる。適切な対応をすれば認知症の人が穏やかに、最期までその人らしく暮らせることを伝えた。

 今回の第三作は、一四年夏に股関節痛で歩けなくなった関口さんが人工股関節の置換手術を受けるシーンから始まる。全身麻酔を受け、遠のく意識に自身の「死」を思い、介護生活五年目となったひろこさんとの「この先」も考える。そして、がんで闘病中の山田トシ子さんと出会い、自分の最期の迎え方についても、より深く考え始める−と物語は展開する。

 「終わりなき介護とよく言うけれど、その先には必ず死がある」と関口さんは言う。「病棟の母」と慕った山田さんは、自宅療養を経て、緩和ケア病棟で「眠りながら」亡くなった。ひろこさんは、脳の発作で何度も救急搬送される。そうした中、関口さんは国内外に老いや病、死に深くかかわる人々を訪ねて旅する。

 英国の精神科医ヒューゴ・デ・ウァール博士は、認知症の人を尊重し、人生や人柄、心理状態を探ることで、適切に対応する「パーソン・センタード・ケア(PCC)」を実践している。第二作に続いて登場し、死についてもPCCの大切さを訴える。スイスでは、合法となっている患者の「自死幇助(ほうじょ)」を行う在宅医エリカ・プライチェク博士とも対話した。

 旅を通じて見えてくるのは、死の「自己決定」や「選択肢」の重要性だ。ひろこさんの「生殺与奪の権は私が握っている」と関口さんは話す。重い「命の責任」を一人息子(18)には負わせたくないと、自身の最期の迎え方も探る。

 「認知症は日本のケアのあり方や介護の専門家の育成法、家族の関係、教育までを問い直す福音だ」と関口さんは指摘する。その先の死を巡る問題もまた社会や制度のひずみを照らし出す。だが「待っているだけではだめ。変えるには、動ける人が動かないと。私にとってはそれが映画を撮ること」と力を込めた。

◆来月以降に順次公開

 「毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル〜最期に死ぬ時。」は7月14日から東京都中野区のポレポレ東中野、北区のシネマ・チュプキ・タバタで公開。前2作の再上映も。ポレポレでは、トークイベントを毎日開催する。9月下旬からは、名古屋市中村区のシネマスコーレでも公開の予定。詳細は公式サイト(「毎日がアルツハイマー」で検索)から。

 

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