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【暮らし】

<守って子どもの命 遺族たちの願い> (中)保育園でのうつぶせ寝

保育園に預けられた初日に亡くなった浅野響翔ちゃんの写真。遺骨を手に母親の美奈さん(右)はうつぶせ寝の危険性を訴える=大阪市内で

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 浅野響翔(ひびと)ちゃん=当時一歳二カ月=は二〇一六年四月四日、大阪市の認可外保育園でうつぶせ寝で、ぐったりしているところを発見され亡くなった。母親の美奈さん(34)が園から連絡を受け職場から病院に駆けつけた時、響翔ちゃんの意識は既になかった。「戻っといで、戻っといで」。呼び掛ける美奈さんの願いは届かなかった。その日は、初めて響翔ちゃんを保育園に預けた日だった。

 同年六月に市が立ち上げた検証部会の報告書によると、当日は一〜三歳児の十一人を保育士と無資格の職員計二人で見ていた。保育士が寝かしつけて午後二時四十分ごろからあおむけで寝始めた。だが、午後三時二十五分ごろ、保育士がうつぶせで寝ている響翔ちゃんに気付き抱き上げたところ、顔は真っ白で唇も紫色で反応がなかった。保育士は人工呼吸などをしてから、約二十分後に一一九番通報。午後四時前に救急車が到着した時には心肺停止状態だった。

 司法解剖の結果、死因は窒息死。解剖した大阪大法医学教室の中間健太郎医師によると、響翔ちゃんの胃には昼に食べたコーンやチンゲンサイなどの食材がほとんど消化されずに残っていた。気管には大量の嘔吐(おうと)物が詰まり、肺の表面にも急性の呼吸器障害を疑う赤色の小さな斑点があった。

 響翔ちゃんは、泣きながら眠ったと保育士らは証言している。中間医師は「緊張やストレスで心拍数を上げる交感神経が優位になり、逆に消化に影響する副交感神経がにぶって腸管の働きが悪くなっていたのだろう。大泣きやうつぶせ寝など何らかの原因で腹圧がかかった可能性がある」とうつぶせ寝が事故につながった可能性を指摘した。

 うつぶせ寝をしていた子どもが保育園で亡くなる事故はこれまでにも多発。内閣府によると、一五〜一七年に保育施設で乳児二十五人が睡眠中に死亡し、うち十一人はうつぶせ寝だった。消費者庁の調査でも一〇〜一四年に、家庭などでゼロ歳児が就寝時に窒息で死亡した事故は百六十件あり、顔がマットレスなど寝具に埋まった状況が三十三件で最多だった。窒息のリスクを取り除く方法として、内閣府の保育事故防止ガイドラインは「乳児の顔が見えるあおむけに寝かせることが重要」としている。

 美奈さん夫婦もうつぶせ寝の危険性を認識し、家では必ずあおむけに寝かせていた。「保育士らがもっと早くうつぶせ寝に気付いて、あおむけに戻してくれていたら。保育園に預けなければ良かったと、ずっと自分を責めてきた」

 なぜ、うつぶせ寝をしていた子が亡くなる事故はなくならないのか。うつぶせ寝の危険性が周知徹底されていないことに加え、人手不足などの影響で、保育士の目が子どもたちに十分行き届きにくい職場環境が背景にある。

 名古屋市の保育士(52)は「うつぶせ寝でしか寝付けない子もいて、泣かせておくよりいいからと、うつぶせで寝かせることがある」と話す。寝入ったらすぐあおむけに戻すことにしているが、「その子が起きて泣くと他の子も起きてしまうので、そのまま寝かせたいと思う時も正直ある。他の子が吐くなど突発的なことが起きれば、そちらに気を取られてあおむけにするのを忘れることもあり得る」と明かした。

 待機児童解消のため、国は保育資格のない職員を増やすことで受け皿を増やそうとしているが、「赤ちゃんの急死を考える会」会長で、一九九八年に保育園でうつぶせ寝をしていた当時四カ月の長女を亡くした小山義夫さん(56)=埼玉県川越市=は「保育の質が落ちることが心配。子どもの命を守ることを最優先にした保育をしてほしい」と訴える。 (細川暁子)

 

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