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【暮らし】

経口妊娠中絶薬 「体に負担少ない」承認求める声

個人輸入されたインド製の経口妊娠中絶薬(厚生労働省提供)

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 厚生労働省は5月、個人輸入したインド製の経口妊娠中絶薬を使った20代の女性に、多量出血などの健康被害が出たと発表した。世界保健機関(WHO)が推奨している薬剤だが、日本では未承認の薬が含まれていたという。ただ、医療関係者の間では「手術より体への負担が少ない」と承認を求める声もある。どのような働きをする薬なのか、専門家に聞いた。 (竹上順子)

 厚労省によると、健康被害が起きたのは四月。インターネットを介してインド製と表示された経口薬を個人輸入し、服用した女性に出血やけいれん、腹痛などの症状が出た。女性が仙台市内の医療機関に入院したため、薬の使用が発覚。女性は処置を受けて回復し、退院した。

 厚労省によると、この薬には、「ミフェプリストン」と「ミソプロストール」と二種類の薬剤名が表示されていた。ミフェプリストンは日本では未承認で、ミソプロストールは潰瘍の薬に使われるが、妊娠中の女性には流産の恐れがあるため服用しないよう指導されている。

 ただ、WHOは二〇一二年に出した指針「安全な中絶」(第二版)で「薬剤による中絶の場合に推奨される方法」と明記。日本家族計画協会(東京都新宿区)会長で医師の北村邦夫さん(67)は「安全性が高く、世界では広く使われている」と話す。

 WHOの指針などによると、ミフェプリストンは妊娠の継続に必要な女性ホルモン「プロゲステロン」の働きを抑制。ミソプロストールは子宮の収縮を高め、子宮の内容物を排出させる。使用する際は、ミフェプリストン、ミソプロストールの順で服用する方法が一般的。薬剤による中絶は、自然流産と似ており、平均で九日間の出血が続く。長ければ四十五日まで続くことがあるがまれという。副作用には吐き気や嘔吐(おうと)、下痢などがある。

 北村さんによると、ミフェプリストンは昨年末までに六十五カ国・地域が承認。最終月経から四十九日以内の使用で、完全流産率は95%という。

 日本でも、使用を認めるよう求める声があり、北村さんは「現在、日本で主流の〓爬(そうは)術よりも、女性の体への負担はずっと小さい」と指摘。NPO法人「女性医療ネットワーク」理事長で対馬ルリ子女性ライフクリニック(同中央区、新宿区)院長の対馬ルリ子さん(60)も「〓爬術は、女性の心にも体にも傷が残る手術。次の妊娠にも不利になる」と話す。WHOは、妊娠十二〜十四週までに外科的中絶を行う場合、〓爬術よりも、体への負担が少ない真空吸引法にするよう強く推奨している。

 「思わぬ妊娠をした女性に対し、ほぼ〓爬術の日本の中絶方法は懲罰のように思える」と対馬さん。約五年前に訪れたオランダの公的な中絶専門クリニックでは、訪れた女性たちにまず丁寧なカウンセリングを行い、一人でも産み育てられる支援制度や里子に出すといった選択肢も提示。その上で中絶を望んだ場合は、薬剤か吸引法による中絶を無料で行うという。

◆個人輸入は危険

 各国で広く使われているとはいえ、医師の指導も受けずに海外からインターネットで手に入れた薬を使うのは危険だ。健康被害が生じた女性はインドから個人で輸入。北村さんは「使われた薬が本当に有効成分を持っているかどうかの確認が難しい」と指摘する。

 厚労省は、米国や欧州連合(EU)などで製造された中絶薬に対し、医師の処方がなければ個人輸入できないよう制限している。今回も、多量出血や細菌感染の恐れもあるとして「医師からの指示を受けずに使用することは大変危険」と注意を呼びかけた。

 北村さんは「手軽に安く手に入ってしまうから、自己判断でインターネットで買ってしまう人が出る。日本でもきちんと医師の下で使われるよう、早く承認されるべきだ」と話している。

※ 〓は、てへんに蚤

 

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