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【暮らし】

<親子で青空を>重症障害児向けデイサービス(上) 介護で疲弊 家族支える

重症児をあやす上野多加子さん。「退院後も親子の支援が必要」と話す=名古屋市西区で

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 染色体や脳に異常があり、重い障害を伴って生まれてきた子どもたちがいる。肢体が不自由なため、生まれたときから付きっきりの介護が必要となり、心身ともにすり減ってしまう親は多い。そんな親に寄り添い、生活を支えているのが名古屋市西区の重症心身障害児向け放課後等デイサービス「miki(みき)」と主に未就学児が通う隣接の「mini(みに)」だ。重症児とその家族を支援する取り組みを追った。 (花井康子)

 ピー、ピー、ピー。子どもの指先に取り付けられた計測器から、血液中の酸素量の低下などを知らせるアラームが鳴り響く。駆け寄ったスタッフが顔色をうかがい「少し鼻が詰まってるから、苦しいのかな」と話し掛けた。どうやら大事ではなさそうだ。

 施設の一室で五月に開かれたデイサービスの仕組みに関する勉強会。その中に、両親に連れられた名古屋市の女児(3つ)の姿があった。miniに通う女児は生まれつき染色体異常がある「18トリソミー」を患い、呼吸や心臓の働きが不安定なため、血中酸素量などの計測器は手放せない。布団に横たわる女児を看護師などの資格があるスタッフ数人が見守り、状態に変化はないか目を光らせていた。

 女児は妊娠二十一週のとき、六〇〇グラムに満たない体重で生まれた。心臓にも疾患があり、生後九カ月のときには肝臓がんが発覚。入退院を繰り返した。

 女児は気管を切開し、定期的なたんの吸引が欠かせない。片時も娘から離れられない日々が続いた。計測器のアラームが鳴ると、夜中でも跳び起き、「命が危ないのでは」と神経をすり減らした。風邪をひくだけで命にかかわりかねないため、外出もできなかった。

 そんなとき、かかりつけ医の紹介で見つけたのがminiだった。女児は二歳になっていた。預け始めて二日目、母親は一人でカフェに入った。出産して初めての一人だけの時間。コーヒーをすすりながら、自然と涙があふれた。

 mikiとminiの両施設は、名古屋市の看護師上野多加子さん(31)が、二〇一六年と一七年にそれぞれ開設した。動かしたのは、看護師としての経験だ。

 上野さんは八年間、急性期病院の小児科病棟で勤務。重い病気の子どもが命を落とす現場に何度も立ち会ってきた。助かったとしても重い障害が残り、退院後は介護の負担がのしかかる。介護疲れで失踪したり、気持ちが不安定になったりする親を何度も見てきた。「退院後の生活を病院が支援することはない。これでは家族は疲弊するだけ」と上野さん。名古屋市の社会福祉法人の支援を取り付け、施設開設にこぎ着けた。

 女児の母親は数カ月前から、短時間ながら職場に復帰した。今は施設に通う親らと勉強会をするなど活発に交流もしている。「病気が分かったときは大混乱だったが、ようやく落ち着いて生活できている。預かってもらえるからこそ今の生活は成り立っている」と話した。

 

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