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【暮らし】

<親子で青空を>重症障害児向けデイサービス(中) 五感を刺激“生”が輝く

天木瑠里子さん(左)がツリーチャイムに触れさせると、寝たきりの重症児の表情が和らいだ=名古屋市西区で

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 ♪手をたたきましょう たんたんたん…。引き戸を開けると、キーボードの演奏に合わせた、楽しげな童謡が聞こえてきた。

 主に未就学児が通う名古屋市西区の重症心身障害児向けデイサービス施設「mini(みに)」。音楽が流れると、寝たきりの子どもたちに変化が見られた。何度もまばたきをしたり、口をもぐもぐと動かしたり、にこっと笑ったり。わずかに動く手を伸ばし、隣に寝ている友達に触る子も。ただ寝ているだけに見えた子どもたちの表情が、みるみる明るくなっていく。

 miniが一年ほど前から、療育に取り入れている音楽の時間。ただ音楽を聴くだけでなく、歌詞に合わせてスタッフが足をなでたり手を握ったり。プラスチックの容器の中に、ビーズや短く切ったストローを入れた手作りのマラカスや鈴、ツリーチャイムなどの楽器に触れさせ、音を鳴らして見せたりもする。人に触られたり物に触れたりする感覚を育てることも狙いの一つだ。

 「視覚や聴覚など五感を使って音楽を感じてもらうことで、日々の生活に喜びを感じてもらいたいんです」。指導する音楽療法士の天木瑠里子さん(24)は話す。

 「ここに来るようになって、表情が豊かになった。お迎えに行くと、顔がキラキラしていて」。生まれつき染色体に異常がある「18トリソミー」の女児(3つ)を通わせる名古屋市内の母親(46)は目を細めた。

 miniでは体に負担がかからない範囲で、子どもたちに季節感やワクワク感を感じてもらう活動も取り入れている。夏は室内にレジャーシートを敷き、おけに水を張って水遊び。冬に雪が降ると、ほんの少しだけ外に出る。シャボン玉を部屋の中で飛ばしたり、季節の食べ物や動物などをスタッフと一緒に折り紙で作ったりもする。体温調節がうまくできない影響で気温差に耐えられず、免疫力が弱いため、一日中、室内で過ごす子がほとんどだが、体が許す限り、健常児と同じように刺激を受けてもらう取り組みだ。

 施設を開設した看護師の上野多加子さん(31)は「寝たきりでも、健常の子と同じように楽しいことが好きだし、親も同じように子育てしたい気持ちがある。お母さん一人では難しいことでも、ここでなら体験させられる。五感を育てることで『見たい』『触りたい』という気持ちが子どもたちの中に芽生え、心身の発達につながる」と話す。

 効果は想像以上のようだ。子どもたちの表情が豊かになり、それまでは包み隠されていた生の感情がにじみ出るように伝わってくる。目が見えない子が、絵本の読み聞かせで目が見えているような反応を示すなど、「ハッとさせられることもある」という。

 生まれつき、重い障害のある子どもたち。長くは生きられない子もいる。それでも、子どもたちにはそれぞれの人生がある。「限られた時間なら、その時間を最大限使っていろんな体験をしてもらい、可能性を引き出してあげたい。医療的なケアやリハビリで命をつなぐことだけが“生きること”ではないと思うから」 (花井康子)

 

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