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【暮らし】

<矛盾だらけの障害年金>1型糖尿病患者(下) 審査一元化、消えぬ疑問

日本年金機構から送られてきたそれぞれの通知に目を落とす滝谷香さん(左)と和之さん=大阪府岸和田市で

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 昨年一月、大阪府岸和田市の主婦、滝谷香さん(36)は生活費の切り詰めに追われていた。1型糖尿病のため、二十歳のころから受けてきた月約八万円の障害基礎年金が、前年の更新で「障害の程度が基準に満たない」として打ち切られたからだった。

 香さんは、同じ1型患者の夫和之さん(36)と、長男康馬(こうま)君(10)と毎月三十万円台後半で生活していた。その中には、血糖を正常に保つため、毎日の投与が欠かせないインスリン代など月五万円近い夫婦の医療費も含まれている。八万円は決して小さい額ではない。

 食費を抑えるだけでなく、長男の習い事の費用は両親に負担してもらい、夫婦がそれぞれ入っていた医療保険は掛け金の安いものに切り替えた。それでも足りず、結局、医療費を抑えるため、災害時に備えて買い足していたインスリンから先に消費し、合併症である網膜症や歯周病予防のための通院もやめた。

 二十歳から受給してきた障害年金について「もらえるのは当たり前やないし、だからこそ国には感謝しかなかった」。でも、突然の打ち切りに「ひょっとして切り捨てやないんか」との疑念も頭をもたげていた。

 明確な理由もなく打ち切られたのは香さんだけではなかった。香さんが加入する1型患者の会八人もまた、症状の改善はないのに、成人後に受給してきた二級の障害基礎年金を打ち切られていた。うち七人は香さんと同じ一六年に更新の審査を受け、支給停止の通知を受けている。九人は厚生労働省に不服申し立てをしたが決定は覆らず、昨年十一月、処分取り消しを求め大阪地裁に提訴した。

 今年一月には和之さんに日本年金機構から通知が届く。和之さんも二十歳から二級の障害基礎年金を受給し、香さんより一年遅く更新を迎えていた。通知には「審査の結果、受給できる障害の程度にあると判断できなかった」との文面。懸念していた、夫への打ち切り宣告だった。

 香さんのときにはなかったただし書きが付いていた。それによると、一年間はこれまで通り支給する代わり、一八年度に診断書の再提出を求めていた。その内容と過去の審査結果も併せて精査し、正式に打ち切るかどうかを決定するという。

 年金機構はこのとき、和之さんら障害基礎年金受給者千十人に同じ内容の通知を送っていた。背景には、審査態勢の変更がある。審査はこれまで都道府県ごとの事務センターで認定医が担ってきたが、不支給になる人の割合に最大六倍の地域差があることが判明し、昨年四月、東京に新設した障害年金センターに一元化されていた。

 地方から東京に認定医が変わった影響で、診断書の内容が同じなのに、「程度が軽い」と判断される事態も。その対象者が昨年度に更新を迎えた和之さんら千十人。年金機構が一年間の支給継続を決めたのは、突然の打ち切りで混乱を避けるための経過措置だった。

 夫の障害年金がとりあえず一年間は継続されることになり、香さんはひとまずは胸をなで下ろした。一方、更新時期が一年違うだけで、なぜ夫と自分で扱いに差があるのか、疑問はむしろ膨らんでいる。

 六月にあった二回目の口頭弁論。国側は「障害年金の審査は、その時点での障害の程度に基づいて審査するものであり、過去の状態を説明する必要はない」として、香さんらの主張とは平行線をたどっている。 (添田隆典)

     ◇

 障害年金の問題については随時、掲載します。

 

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