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【暮らし】

<Life around the World>夏を彩る風物詩

 夏の風物詩といえば、海水浴やかき氷、花火など。猛暑が続く中、一瞬でも涼を感じられるのはうれしい。世界にも、この季節ならではの風景、味覚、健康法がある。楽しみながら夏を過ごす知恵を紹介する。

セーヌ川沿いに設けられた「パリ・プラージュ(ビーチ)」を訪れた市民ら=パリで

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◆フランス 大都会でビーチ気分

 フランス人が待ちに待ったバカンス(夏季休暇)の季節がやってきた。風にそよぐヤシの葉にビーチパラソル。水着姿の男女が寝椅子に転がって肌を焼くが、南国のビーチではなくパリの真ん中だ。横を向けばセーヌ川が流れ、ノートルダム大聖堂が見える。

 「音楽を聴きながらくつろげて、気持ちがいいね」。毎年訪れる市内在住の飲食店勤務ブルーノ・ファーブルさん(40)。日焼けをして、休暇本番に備える。

 二〇〇二年以来、市内に登場する「パリ・プラージュ(ビーチ)」。今年はセーヌ川沿いと市役所前、貯水池沿いの三カ所に登場した。七月七日から九月二日まで、午前十時から午後八時まで無料で利用できる。

 街中のビーチはもともと、バカンスに行けない市民のためにパリ市が始めた。一六年までは仏西部ノルマンディー地方から三千五百トンの砂を搬入し、本物の砂浜を再現していた。

 しかし毎日砂に混ざったごみを取り除き、高温の蒸気で消毒する維持管理費を含む設置費用は、多い年で百五十万ユーロ(約二億円)に。砂を提供してきた世界的建築資材会社が、シリアで過激派組織「イスラム国」(IS)に資金提供した疑惑も発覚し、砂の使用を取りやめた。一七年からは芝生に寝椅子を置いている。

 ビーチが登場する期間は、野外で本を借りて読める図書館やフィットネスの講座、巨大なチェス体験などいくつも催しが企画されている。

 仏北東部アルザス地方から初めて訪れたフィリップ・ドルボさん(62)とブリジットさん(57)夫妻は「観光客もゆったり楽しめる。いい旅行気分になりますね」と日焼けした顔をほころばせた。芸術の都パリが夏限定で見せる顔は、新たな魅力にもなっている。 (パリ・竹田佳彦、写真も)

三伏貼の薬をばんそうこうに塗る医師や看護師=北京で

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◆中国 生薬貼って陽気チャージ

 中国では、冬の病気を夏に治す「冬病夏治」の考えから、ショウガなど体を温める生薬を背中に貼る治療法「三伏貼」が盛んだ。

 中国医学では、冬に風邪をひきやすい、胃腸が弱い人などは体内の「陽」のエネルギーが弱いとされる。そのため、冬に病気にならない体づくりとして、夏に陽気を補うことが必要と考えられている。

 古代中国の思想、陰陽五行説では、夏至以降の三回目と四回目、立秋以降の最初の「庚(かのえ)の日」をそれぞれ「初伏」「中伏」「末伏」と呼ぶ。いずれも陽気が高まる日に当たり、陽気を補うのに適しているという。

 「初伏」の十七日、北京市内の「北京中医薬大学東直門医院」には、朝から大雨にもかかわらず、高齢者から子どもまで多くの市民が訪れた。

 同院の食堂が臨時診療所となり、百人近い医師や看護師が待機。ショウガやシロガラシの種など体を温める数種類の生薬に水分を加えて泥状に練り、手際良くばんそうこうで背中に貼り付けていく。

 小児科の王俊宏(おうしゅんこう)主任は「宋の時代からある治療法。必ずではないが陽気が一番旺盛な初伏からが効果が高い」と説明する。配合内容は「企業秘密」。治療は該当日から三日連続行う。今年は暦の関係で「中伏」が二日あるため、治療は計十二回行う。一回三十元(約五百円)だが、保険適用されるので、会社員など一割負担なら三十六元で済む。朝六時半から昼休みなしで十二時間、千人以上が来院する日もあるという。

 記者も背中の両側の経絡に沿って、肺と脾(ひ)・膵臓(すいぞう)、腎臓のツボに計六カ所貼ってみた。数分もすると背中がポカポカし、熱くないおきゅうのような感覚だ。ただ二〜四時間で剥がさないと皮膚がかぶれるという。

 三伏貼をしている間は辛いものや油もの、生ものなどは避けるという。冷えたビールが飲みたくなるこの時季、三伏貼が苦行に思えてきた。 (北京・安藤淳、写真も)

色鮮やかなレモネードスタンド。売り上げは動物愛護などの慈善団体に贈られるという=米ニューヨーク州チャパクアで

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◆米国 レモネードで社会勉強

 ひと目でそれと分かる鮮やかな店構え。ニューヨーク・マンハッタンから北に50キロ、緑豊かなチャパクアの目抜き通りで毎週土曜日、子どもたちがレモネードスタンドを開いている。

 最高気温が30度を超えた6月下旬の昼前。「一つもらえるかな」。通り掛かりの買い物客が財布を取り出した。4人の女の子は照れた様子。1人がお金を受け取り、2人目がプラスチックのコップに氷を入れ、レモン片が浮かぶ容器から3人目が手づくりのレモネードを注ぐ。最後の子が紙ストローを挿して完成だ。

 1杯2ドル(220円)。売り上げは全額が動物愛護などの慈善団体に贈られる。5月から9月まで夏限定のボランティア活動だ。初めての店番というアニカさん(12)は「これで3杯目、4杯目かな。楽しいです」と笑顔を見せた。

 米映画でも夏を象徴する光景として描かれてきたレモネードスタンド。その起源は不明だが、米紙ウォールストリート・ジャーナルは「1100年にはエジプト・カイロのユダヤ人貿易商が甘くしたレモンジュースを販売、輸出していた資料がある」と指摘する。

 同紙によると、米国では1860年代、ニューヨークの行商人がハチミツ入りのレモネードをバケツで混ぜ、喉を渇かせてマンハッタンに上陸した移民に売った。やがて子どもらが小遣い稼ぎを通じて自主性や資本主義を学ぶ夏の風物詩に。しかし、近年は食品衛生や許認可の問題から、無届けのレモネードスタンドを禁じる地域もあり、ありふれた光景とはいえない。

 チャパクアでは昨年、6000ドルを売り上げたという。世話役の子ども雑貨店経営ロリ・コールマンさん(54)は「楽しみながら、さまざまな慈善活動を知ってほしい」と期待した。 (チャパクア・赤川肇、写真も)

 

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