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【暮らし】

孤独に直面「消えたい」 育児と介護 ダブルケア 相談できず

育児しながら母親(左)を介護する杉山仁美さん(右)。「社会の理解が広まってほしい」と話す=名古屋市内で

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 子育てと同時に親の介護もする「ダブルケア」。内閣府の調査では、全国で約二十五万人が直面しているとみられる。だが、周囲に相談する人がおらず、心理的な負担感が増していく一方という人は少なくない。当事者たちからは、愚痴を言い合える場所を作るよう望む声も上がっている。(細川暁子)

 「『もう消えたい』。そう思った時期もあった」。脳出血で右半身がまひした母親(66)を介護しながら、小学二年生の長女(7つ)と幼稚園の次女(5つ)を育てる名古屋市内の主婦、杉山仁美さん(37)は、こう振り返る。

 別居していた母親が自宅で倒れたのは二〇一四年。それを機に、夫と娘二人とともに母親の家に転居した。いいママ、いい娘でありたいと願いつつ、そうできないことに悩む日が始まった。

 母親は要介護4で食べ物をうまくのみ込めず、野菜を細かく刻んだりとろみをつけたりと、食事作りにも気配りが必要だ。最もつらかったのは、次女がおむつ外しの練習中だった三年ほど前。次女はおもらしを繰り返し、母親もトイレが間に合わず床を汚すことがあり、そのたびに掃除をしてシャワーを浴びさせ、気がめいった。

 ある日の昼食に、前の晩のおかずの残りを出すと、母親は「同じものを二回も食べたくない」。その一言で、杉山さんの感情は爆発した。「私がどんな思いで毎日、精いっぱいギリギリのところで頑張ってると思ってるの?」。泣きながら言い返すと、母も泣きだした。

 ママ友には介護をしている人はおらず、気持ちを吐き出せる場がなかった。「ずっと家にいると、息詰まる」。ケアマネジャーに相談してヘルパーに来てもらうことにし、昨年二月からは週三回、四時間だけ事務のパートを始めた。

 「仕事を始めたことで、『母』と『娘』以外の『私』として生きられる場所ができた。社会の一員として自分が必要とされていると感じられるようになり、前向きになれた」と話す。

 ソニー生命などが二〜三月、ダブルケアの経験者男女計千人を対象に実施したアンケートでは、最も負担を感じることとして、46・8%が「精神的にしんどい」を挙げた。育児、介護双方でたまるストレスを吐き出す場がないと感じている人が多いとみられ、回答者からは、当事者が出会える「おしゃべり会」をつくるとの要望が強かった。負担を軽減するため、ダブルケアとなっている場合は介護施設や保育園に入所しやすくなるよう配慮を求める声も多かった。

 ダブルケアを理由に離職した経験があるという人も10%いた。ケアと仕事の両立で苦労する原因としては、「ダブルケアの問題が認知されていない」が最多だった。職場で、短時間勤務や出社時間の変更などをしにくいとの声があった。

 二〜十歳の子ども三人がいる東京都内の天野妙さん(43)もダブルケアに直面する一人だ。同居する要介護2の母親(75)は、一五年に認知症の診断を受けた。三人目の子どもを妊娠中だった。母親の通院の付き添いは毎週で、つわりの時期とも重なり、勤めていた会社を辞めた。「自分のペースで仕事ができる会社を作るしかない」と、女性活躍を推進する人事コンサルタント会社を立ち上げた。

 「判断力が落ちるなど症状が重くなる一方の母親をずっとそばで見ていて、精神的に病みそうになった時もある」と天野さんは言う。「私の場合は仕事をすることで、気持ちを切り替えることができている。企業が在宅勤務を認めるなど、社会的な支援が広がってほしい」と願う。

 

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