東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 7月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

<ともに>読み書き困難(中) 認められぬ失意の中で…

毎週日曜日、山崎幸子さん(左)の自宅で学校生活の相談や学習をしている大谷梨華さん=長野市で

写真

 周囲が気付きにくい学習障害(LD)の一つ、「読み書き困難」。長野市の高等専修学校一年生(高校一年に相当)、大谷梨華(りか)さん(16)はこの障害に悩みながらも、小学六年でデジタル教科書に出合い、勉強や読書の楽しさを知った。

 大谷さんが地元の市立中学校に進んだ年の五月、小学校の特別支援学級の担任だった山崎幸子(ゆきこ)さん(53)に一本の電話がかかってきた。すがるような声だった。

 「先生どうしよう。梨華がだめになっちゃった。全然笑わなくなっちゃった」

 母親からだった。中学校にデジタル教科書の使用を認めてもらえず、ふさぎ込んでいるという。山崎さんは耳を疑った。「中学校の先生との支援会議で、デジタル教科書を使うことも説明して引き継いだのに、なぜ」

 中学の特別支援学級の担任は、授業での様子から「ちゃんと読めている。デジタル教科書がなくても大丈夫そうだ」と判断。ソフトの入ったタブレット端末の持ち込みに難色を示した。

 大谷さんは担任に何度も説明した。「紙の教科書では文字は追えても内容が頭に入ってこない。デジタル教科書の読み上げ音声や読んでいる所を示す表示がある時とは大違いなんです」

 しかし何度説明しても、話は平行線。

 大谷さんが高校入試で不利にならないよう紙に早く慣れさせたかった可能性はある。一方で「端末を学校に持ち込ませることへの抵抗もあったのでは」と、山崎さんは推測する。

 日本障害者リハビリテーション協会参与の西澤達夫さん(64)はこう言う。「デジタル教科書は、視力が低い子にとっての眼鏡のようなもの」。使えれば問題ないのに、使えないと土俵にさえ上がれない。

 こうした受け入れる側の事情で一番傷ついたのが、大谷さん本人だ。「使った方が楽なのに。道具があれば、もっとできるのに」。使用が認めてもらえず、日に日に元気がなくなっていく大谷さんをふびんに思い、母親が山崎さんに助けを求めた。

 すでに教師−生徒の関係ではない。でも山崎さんは「勉強への意欲が湧いたのに、もったいない」。その日から、二人三脚の学習が始まった。毎週日曜の午前中、大谷さんが山崎さんの自宅を訪ね、約三時間、学校での話や、デジタル教科書を使った勉強や読書をして一緒に過ごす。

 山崎さんにとっては、完全なプライベートの支援。「先生の心証は、高校進学時の内申点に影響しかねない」と心配し、「授業」は中学校には内緒だった。

 「教科書を読むのがつらかった時期を脱し、ようやく前向きに勉強に取り組めるようになったところ。何とかうまくいってほしい一心だった」と山崎さんは支援の理由を語る。学習以外にも、学校でのつらさを受け止めてもらうことで、大谷さんは日を追うごとに落ち着いていった。

 それでも、大谷さんの中学校に対する失望は消えなかった。再び学ぼうという前向きな気持ちになるのは、ある学校の存在を知ってからだった。 (今川綾音)

 =次回は三十一日掲載

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報