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【暮らし】

社協が身元保証支援 身寄りのない高齢者 施設入所などで壁

入院などに備え、社会福祉協議会の身元保証事業を利用している男性(左)。社協の職員(右)が訪問し、健康状態などを確認する=東京都足立区で

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 身寄りのないお年寄りが介護施設に入所したり、病気で入院したりする際に、立ちはだかるのが身元保証人の壁。保証人がいないと利用を断られるケースもあり、切実な問題だ。こうしたお年寄りたちを支える身元保証サービスが広がっているが、中にはサービスを提供する事業者の破綻などのトラブルも。そんな心配を軽減するため、社会福祉協議会など公的な性質を持つ機関が支援する例もでてきた。 (細川暁子)

 東京都足立区の男性(81)は二年前、区内の高齢者福祉施設に入所した。妻は三年前に亡くなり、子どもはいない。入所時に作成した契約書の緊急連絡先には、同区社会福祉協議会「権利擁護センターあだち」の電話番号が記されている。

 男性は妻の他界をきっかけに、長年住んだ都営住宅を引き払い、施設入所を考えた。だが、入所には身元保証人が必要だと分かり、民間の保証サービス会社にも電話したが、費用などが分かりにくく、契約は不安だった。

 区に相談すると、同区社協が保証人機能を担ったり、入院時にも立ち会ったりしてくれることが分かった。男性は「安心して暮らせるのは、社協のおかげ。ありがたい」と話す。

 同区社協は二〇〇五年四月に高齢者が施設や病院に入る際、身元保証機能を担う「高齢者あんしん生活支援事業」を開始。区民から「施設入所や入院の際に、保証人がいないという理由で断られた」との相談が増えたことがきっかけだった。これまでに契約したのは、自宅で一人暮らしの人ら八十四人。初年度は三人にとどまったが、現在は五十五人が利用している。

 利用できるのは、一人暮らしの六十五歳以上。「支援可能な親族がいない」「資産が三千万円以下」などの条件もある。将来に備え三カ月の入院費や火葬代など計五十二万円を預託し、年会費二千四百円を払う。民間では預託金などが計数百万円になることもあり、相当に費用を抑えられる。

 社協の担当職員は七人。緊急時に備えて自宅の鍵を預かり、休日や夜間も携帯電話を当番制で持つ。月に一度利用者に電話、半年に一度訪問し、体調などに変化がないか確認する。成年後見制度の利用や生活保護受給の手続きも支援する。

 契約者が入院すれば、日用品を持っていったり、病院から求められれば保証人欄にサインしたりもする。利用者が亡くなった場合には遺言書に従い、遺言執行者の司法書士らと連携して火葬や納骨まで行う。

 ただ、区から人件費の補助があるものの、ある男性職員は「職員二人で一人のお年寄りを担当している。支援が必要な人はもっと多いと思うが、赤字運営の上、人が足りなく手いっぱい」と話す。利用者の預貯金の確認や、遺言状の作成などで契約までには最短で四カ月かかり、契約前に亡くなるケースもある。

 同様の支援は、都内では調布市の社協も行っているほか、府中市の社協は一九九七年から市の補助を受けて、身寄りのないお年寄りが民間の賃貸住宅に入居する際に無料で保証人となっている。家賃の滞納があれば、三カ月分の家賃を社協が払う制度で、現在六十二人が利用しているという。

 淑徳大の結城康博教授(社会保障論)は「社協は自治体の補助を得られる場合もあり費用を抑えられる。しかし、民間と同じサービスを公共が提供することの是非は意見が分かれ、どこの自治体もやるということにはならないだろう」と指摘。その状況を踏まえて「国が民間事業者を認可して質を担保したり、保証人なしでも入院や施設入所できるように法整備したりという対応も必要ではないか」と話す。

 

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