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【暮らし】

公務災害 申請に「格差」 非常勤職員 認められないケースも 

森下真由美さん(左)と佃祐世弁護士=東京都内で 命に違いがあるのですか「非常勤という身分のために補償を請求する権利も認められないのはおかしい」と訴える

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 自治体で働く非常勤職員が、常勤ならできる公務災害の認定を申請できないケースがある。福岡地裁では、北九州市の非常勤職員として働いていた女性が自殺した後、パワハラなど不適切な労務管理が原因だと考える両親が申請を認められなかったことの不当性を問い訴訟中だ。非常勤職員などの労働問題に取り組むNPOの調査によると、自治体の対応はまちまちで、国に法改正を求める声が上がる。 (小林由比)

 「娘は命を削って仕事をしていた。常勤と非常勤で命の重さに違いがあるのでしょうか」。森下真由美さん(大分県在住)は七月中旬、国会内で開かれた集会で、二十七歳で亡くなった長女の佳奈さんの労災申請すらできなかった悔しさを訴えた。

 佳奈さんは二〇一二年四月に市の非常勤職員となり、区役所で虐待や育児不安などの相談に乗っていたが、翌年一月に心身の不調を訴え休職。うつ病と診断され、同年三月で退職した。その後も治療を続けていたが、一五年五月に一回の処方量を超える抗うつ剤などを飲んだ後に亡くなった。

 真由美さんや代理人の佃祐世(さちよ)弁護士によると、佳奈さんは一二年秋から、上司に個室で二時間叱責され続けるなどして思い悩むようになった。新人の佳奈さんには対応が難しい相談があっても、一人で任されることもあったという。「死んでしまいたい」。休職直前には真由美さんにこんなメールも送っていた。

 両親が一六年八月、労災認定について市に尋ねると、市は「申請は認められていない」と回答。市によると、非常勤の労災について本人や家族からの認定請求の規定を条例や施行規則で定めておらず、事実上、職場が認めた場合以外は申請の道が閉ざされる。

 市は当時の上司らへの聞き取り調査により、「パワハラの事実はなかったと判断している」と説明。遺族側は「長女本人への聞き取りすらしておらず、調査とは言えない」と批判する。

 このケースの背景には、公務員の公務災害認定についての「格差」がある。常勤は、地方公務員災害補償法に基づき申請できるほか、非常勤でもごみ収集作業員や学校給食調理員など現業部門の人は民間と同じく労働者災害補償保険法が適用される。しかし、事務部門などの非常勤職員や臨時職員は地公災法に基づく自治体条例によって定められるため、北九州市のような対応を取る自治体もある。

 佃弁護士は「非常勤であれば、公務災害に遭っても労災隠しさえできてしまう制度で、他自治体でも起こり得る」と批判する。

◆自治体まちまち「明文化が必要」

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 NPO法人官製ワーキングプア研究会は5月、全国の都道府県や政令市など165自治体に臨時・非常勤職員の公務災害申請への対応を尋ねた。

 中間報告では、有効回答92自治体のうち15自治体が本人や遺族から「申請できない」と回答。一方、8割超の自治体は「申請できる」としたが、条例で明文化せず、施行規則や運用で対応しているのがほとんど。同会によると、条例の多くは、非正規公務員が少なかった約50年前に国が示した「ひな型」を基にしているという。

 しかし自治体職員の非正規化は進み、2016年は全体の23%。特に市区町村では33%を占めるように。基幹的な仕事を担う職員もいて、半世紀前と状況は大きく違う。同会の白石孝理事長は「条例や施行規則にしっかり明文化すべきだ。国家公務員と同じように補償を一元化する法改正も必要だ」と指摘する。

 

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