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【暮らし】

<知りたい!マインドフルネス>(下)医療現場で 瞑想続け抑うつ和らぐ

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 瞑想(めいそう)などを通し「今この瞬間」を意識することで、疲れた脳を休息させるマインドフルネス。集中力向上やストレス軽減といった効果があり、社員研修に活用する動きを七日に紹介した。うつ病などの治療に取り入れる医療機関もあり、一定の成果が出ているという。 (小中寿美)

 うつ病や不安障害の患者が通う和楽会ショートケアセンター(東京都港区)。マインドフルネスのプログラムを治療の一環で毎日行う全国でも珍しい施設だ。参加しているのは同じ建物のクリニックに通う患者たち。記者も体験した。

 三時間のプログラムはヨガから始まった=写真。最初はあおむけの姿勢で自分の呼吸や心の様子を眺める。「どんな状態でも良い悪いと評価をせず、そのままを見つめ続けて」と講師の樋口まりさん(35)。

 ポーズを取ることが目的ではないと聞き、気が楽になった。呼吸のリズムに合わせて手足を伸ばしたり、脱力したり。体が温まり、ほぐれていくのを感じる。

 心も落ち着いたと思ったが、いざ瞑想を始めると雑念が湧く。精神科医で和楽会理事長の貝谷久宣さん(74)は「雑念に気付いてもとらわれない」と指南した。

 二十五分の瞑想の終盤には「慈愛の瞑想」=図=を行う。宗教の祈りのようだが、海外でも行われ、ストレス軽減などの効果が高いと実証されている。貝谷さんによると、続けると自責の念が減り、他人を思いやる心が持てるようになり、抑うつ気分は消失していくという。

 マインドフルネスの今の流行は、米マサチューセッツ大名誉教授のジョン・カバットジン博士がグループ療法のプログラムを開発したのが発端。さまざまな病気で効果が示され、研究や実践が広まった。

 二〇一二年にカバットジン博士が来日した際、貝谷さんは「マインドフルネスの根本は何か」と質問。博士は「道元の禅だ」と答えたという。還暦を迎えてから座禅を始め、仏教の思想が医療に応用できると感じていた貝谷さんは、回答が腹に落ちた。

 一五年に和楽会ショートケアセンターを開設。保険適用のグループ療法の枠組みでプログラムを始めた。「重症の場合は服薬や認知行動療法から始めるが、症状が安定したらマインドフルネスを勧める」。参加者に心理検査を行うと、抑うつ気分と不安気分の数値がともに下がっていた。

 「多くの患者が最初に気付くのは腹が立たなくなること。今の瞬間を優しい気持ちで受け入れることが、生活の中に無意識に浸透するからでは」と推測する。

 休職中で二百回ほど通ったという男性公務員(35)は「頭がクリアになった。何より、人と自分を比較しなくなったことが大きい」と表情は穏やかだった。

 瞑想の半ばでは、それまでの一点集中とは違う瞑想も行った。呼吸に集中し今を意識するのは同じだが、聞こえるもの、見えるものにもまんべんなく意識を注ぐ。体の内から外へと意識を広げる感覚だ。

 この意識を広げる瞑想こそ「マインドフルネスの本質」と早稲田大教授で心療内科医の熊野宏昭さん(58)は指摘する。一点集中に慣れた後に行う瞑想だ。「視野を広げることで、思考や感情に巻き込まれている状態から抜け出せるようになる」という。「いろんなものに同時に気を配る感じ。武道や芸道で大切にされてきた心の使い方」と熊野さん。日本古来の精神が息づいていることが、広がりの背景にあるのかもしれない。

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