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【暮らし】

背骨の損傷、セメントで復元 骨粗しょう症 広がる新手術

骨粗しょう症でつぶれた椎体に医療用セメントを詰め、骨の形を復元した男性のエックス線写真(山本至宏医師提供)

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 骨の強度が低下し、わずかな衝撃でも骨折しやすくなる骨粗しょう症。中でも折れやすいのは背骨で、腰痛に悩む人も多い。近年はつぶれた背骨に医療用セメントを詰め、形を復元する手術が広がっている。体への負担が少なく、病状の進行や寝たきりを防ぐ効果があるという。 (砂本紅年)

 東京都八王子市の男性(82)は約一年半前、自宅で転んだ後から腰痛がひどくなり、近くの整形外科を受診。骨粗しょう症により、背骨の椎体がつぶれる骨折と分かった。

 背骨は、円柱状の椎体などから成る椎骨が二十四個積み重なっている。骨粗しょう症で椎体が一個つぶれると、周りの骨に負担がかかり、二個、三個と骨折が連鎖しやすい。

 男性は数年前にも、別の椎体を骨折していた。その時は、装具を着けて安静にするなどの保存治療で痛みは消えた。今回も保存治療を試みたが、三週間たっても激痛は続き、日常生活がままならなくなった。

 東海大八王子病院で受けた手術が「経皮的椎体形成術」(BKP)。うつぶせの状態で、背中から椎体の二カ所を約五ミリずつ切開した後、針を挿入。骨粗しょう症でスカスカとなりつぶれた骨の中で針先の風船(バルーン)を膨らませ、押し広げた空間に医療用セメントを注入する。

 わずかな切開のため出血は少なく、時間も二十三分で終了。つぶれた椎体は元に近い形に膨らんだ。骨が安定したことで痛みは治まったという。術後すぐに歩けるようになり四日後に退院。その後新たな骨折はなく、「思い切って手術してよかった」と喜ぶ。

 骨粗しょう症による骨折部位では、背骨が四分の一を占め最も多い。次いで脚の付け根、手首の関節などがある。経皮的椎体形成術は背骨の骨折に対する治療法で、一九九〇年代に米国で開発された。日本でも既に約二万件の手術実績があり、二〇一一年に保険適用された。

 従来は痛みだけなら保存治療を選択。足のしびれやまひなどの神経症状が出た場合、つぶれた骨の代わりに金属を入れて背中を支える手術をしていた。

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 ただ大きく切開するので出血量も多く、手術時間も長いため、体力が衰えた高齢者には選択できない人もいる。放置すると、痛みが続いて寝たきりになったり、肺炎や栄養失調などの病気にかかって死亡したりするケースも多いが、そんな患者でも経皮的椎体形成術は受けられる。

 前出の男性を手術した東海大八王子病院の医師山本至宏(ゆきひろ)さん(44)は「まひが出てから手術するのではなく、早めに治療すると効果が大きく、寝たきりになるのを防げる」と話す。この病院では、高齢のため金属を入れる手術を選べなかった九十八歳の女性が、経皮的椎体形成術を受けて腰痛を改善した。ただし、背骨の変形が強い場合など一部の患者には手術ができない。

 費用は年齢や所得によって違い、高額療養費として負担を軽減できるケースも。山本医師によると、十万〜二十万円の人が目立っているという。執刀できるのは、規定の訓練を受けた専門の認定指導医のみで、全国で約二千人。病院は専門サイト「せぼねと健康・com」から検索できる。

<骨粗しょう症> 骨密度の低下で骨がもろくなる病気。転倒やせき、くしゃみなどちょっとした衝撃で骨折しやすくなる。骨密度は、その人の思春期までの食生活や運動量などで決まる。閉経後の女性は骨を守る働きをする女性ホルモンが減り、骨密度が急激に低下。70代後半になると、女性の半数が骨粗しょう症に。関連学会によると、全国の患者数は男性300万人に対し、女性980万人といわれる。予防には運動や、カルシウムなど栄養素摂取、転倒防止などが大切。

 

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