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【暮らし】

<矛盾だらけの障害年金>認定医の氏名非公表 審査の公平性欠く懸念

安部さんに開示された認定医の一覧表。氏名や勤務先などが軒並み黒塗りにされている

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 障害年金の支給を決めるうえで、大きな影響力を持つのが、障害の程度を審査する認定医だ。千人を超える障害基礎年金の受給者が症状に変化がないまま、支給停止や停止の予告を受けた問題も、昨年四月に認定医が大幅に入れ替わったことが原因だった。しかし、認定医が誰で、どのような経験や専門性を持つかは非公表。専門家からは「恣意(しい)的な審査の温床になる」と開示を求める声が強まっているが、国側は「審査に支障が出る」として応じていない。 (添田隆典)

 「これじゃ、まったく話にならない」。東京都東村山市の社会保険労務士、安部敬太さん(58)は昨年三月、日本年金機構が開示した「認定医一覧表」を見てあきれ返った。開示されたのは認定医の県名と、精神疾患や内部疾患といった担当疾患のみ。氏名や勤務先、連絡先などは黒塗りにされていた。

 安部さんが開示を求めていたのは、埼玉県を含む北関東・信越地方の認定医の情報。障害基礎年金の申請手続きを請け負った同県の発達障害者が、症状が重いにもかかわらず、不支給の判定を受けたことに疑問を抱いたのがきっかけだった。

 機構は「障害年金の請求者などから不当な働きかけを受ける可能性が高くなり、審査に支障が出る。過去に開示したことで、辞退を申し出た認定医もおり、特定につながる情報は明らかにしないと契約で定めている」と、氏名などの開示を拒否。安部さんは昨年九月、不開示の決定を取り消す訴えを東京地裁に起こしたが、八月の一審判決は機構側の主張を認め、訴えが退けられたため、控訴中だ。

 安部さんが開示請求をしていた当時、障害基礎年金の審査は都道府県ごとに分かれ、各地の認定医が機構から業務を請け負っていた。しかし、都道府県によって不支給となる人の割合に最大六倍の開きがあることが発覚し昨年四月、業務を東京に集約。認定医も東京と近郊の医師に一新した。

 ただ、機構が取材に明らかにした現在の認定医の情報は「三百人」という人数のみ。障害年金の対象は、目や耳から精神、肢体、がんなどの悪性新生物まで十九分野あるが、認定医の専門分野や経験年数、選定方法さえ公表していない。

 障害年金では、一つの案件を複数の認定医で審査する慣例がなく、「厳しく判定する医師に当たれば、受給できるはずの症状でも不支給になる」と、公平性を疑問視する声は社労士らの間で上がっていた。この点は厚生労働省も認め、判定が難しい案件については他の認定医とも協議するよう、機構に通知したのは今年七月。千人超の障害基礎年金の受給者に対する一連の打ち切り予告などが発覚した後だった。

 国の障害認定基準がはっきりしないという問題もある。障害基礎年金を受けるには、検査数値などの客観的な指標だけでなく、「日常生活が著しい制限を受けること」も問われるが、中身は曖昧で、個々の認定医によって判断が分かれやすい。しかも、審査にあたって認定医と本人との面談はなく、主治医が書いた診断書を頼りにしているのが実情だ。

 障害年金に詳しい日本福祉大福祉経営学部(愛知県美浜町)の青木聖久教授は「審査の透明性を高めるため、認定医は名前を含めて公開すべきだ」としたうえで、「誰が審査しても結果に齟齬(そご)が出ないよう認定基準の客観性も同時に高めなければ、根本的な解決にはならない」と指摘している。

 

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