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【暮らし】

独居高齢者宅に学生下宿 「異世代ホームシェア」注目

宮本幸一さん(中)の自宅に同居している大学生の荒木遼太郎さん(右)。「異世代ホームシェア」を普及している石橋〓子さん(左)が仲介した=東京都練馬区で

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 一人暮らしのお年寄りの自宅に学生が下宿する「異世代ホームシェア」が注目されている。ほどよい距離感を保ちながら一つ屋根の下で暮らし、お互いに刺激し合って前向きになったり、会話の相手がいる楽しさや安心感を得たりしている。 (細川暁子)

 東京都練馬区の宮本幸一さん(76)は五月から、早稲田大四年の荒木遼太郎さん(21)と暮らしている。二人が生活する宮本さんの自宅は、二階建ての戸建て住宅。かつては宮本さんの両親と、妻、二人の子と暮らしていたが、両親と妻は亡くなり、子どもたちは独立。空き部屋を有効活用したいと思い、異世代ホームシェアの普及に努めているNPO法人「リブ&リブ」(同区)の会員となった。

 台所、トイレは別々で一階に宮本さん、二階に荒木さんが暮らす。荒木さんは毎日、予定表に帰宅時間を書き込み、予定が変わる時は電話で連絡。適度な距離感を保ちながらも、お互いの状況を把握し合うようにしている。食事は別々だが、週に一度は一緒に夕飯を食べるのが同法人のルール。荒木さんが魚介のパスタ、宮本さんが中華丼などを交代で作り、晩酌しながら二時間程度、一緒にくつろぐ。

 荒木さんは以前、食費込みで月七万円の大学の寮に住んでいた。だが、同法人の取り組みを知り連絡。代表の石橋〓(ふさ)子さんと面談後、宮本さんを紹介された。荒木さんは家賃や光熱費などとして月二万円を宮本さんに、会費月三千円を同法人に払っている。

 荒木さんがホームシェアに申し込んだのは家賃の節約に加え「普通の学生と違うことをしたい」と感じたからだったが、生活も変わってきた。「以前は寮の玄関で靴を脱ぎっぱなしだったけれど、宮本さんに注意されてそろえるようになった。緊張感や刺激があって、だらだらしなくなった」と言う。

 若年性認知症だった宮本さんの妻の思い出話もよく聞く。「家族や自分の老後のことを考えるようになった。授業では学べない貴重な経験をしている」と宮本さんに感謝する。宮本さんは「荒木君のおかげで毎日が充実している」と話す。

 石橋さんが同法人を設立したのは六年前。在日米国大使館を定年退職後、二〇〇〇年ごろからホームシェアが広まっているスペインでお年寄りと学生の異世代ホームシェアを見学。日本でも広がると、孤独死予防になるのではと同法人を設立した。ペアは一人暮らしの高齢者と大学生だが、高齢者の男性と女子学生は組にならず、学生が未成年の場合は親にも面談。お年寄りと学生、それぞれが月一回石橋さんと面談し、生活がうまくいっているか、不満はないかを確認するなどのルールを設けている。

 これまでに、都内のお年寄りと学生の十四組が一緒に生活するようになった。妻の死後、家に閉じこもりがちになる男性が多いといい、「孫ほど年の離れた学生は素直に話しを聞いてくれて、心を開きやすいという人もいる」と言う。

 福井市やその周辺でも、一二年から取り組まれている。福井大住環境計画研究室が中心となり、これまでに五組が成立している。

 同大大学院の菊地吉信准教授は「三世代同居が減る一方で、これから社会に出る学生は高齢者と接する仕事も多く一緒に暮らす経験は財産になる。大学が中心となって異世代ホームシェアを普及させていけば、大学数が多い都会だけでなく、地方でも広がるのでは」と話す。

※〓は金へんに英

 

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