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【暮らし】

介護職へのセクハラ被害が深刻 暴言、暴力も多発 我慢強いられる風潮

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 介護サービスの利用者やその家族から、介護職が受けるセクハラや暴言、暴力などの被害が深刻だ。特に、ヘルパーが利用者宅を訪れて、入浴や食事の介助、買い物への同行などのサービスを提供する訪問介護で被害に遭うことが多く、不安を抱えつつ働く人が少なくない。 (出口有紀)

 東京都内のヘルパー女性(51)は、寝たきりの八十代女性のおむつを替える際、女性と同居する七十代の夫に胸を触られる。五年ほど前に担当するようになった当初からたびたびあり、お酒が入ると「殴ってやる」「おまえのところ(事業所)なんていらない」などと暴言を浴びせられる。

 後日、被害を訴えても、男性は「酔っていて覚えていない」の一点張り。被害を見たはずの妻も夫に介護してもらえなくなると恐れてか「そんなことはしていない」と否定する。

 別の七十代男性の買い物に同行する時も、女性は神経を使う。隙あらば、お尻を触ろうとするからだ。スーパーや路上でも、周囲の人目をはばかることなく触ろうとする。ふらつくことのある男性が転ばないよう注意しつつ、手をよけようと後ろに一歩下がったり、横を向いたりする。

 女性は、事業所のヘルパーを統括する。ヘルパーの中には、触られることに耐えられず、被害を受けた家に行けなくなる人が少なくない。我慢して介護に行ける女性ヘルパーは女性のほかには一人だけ。「ローテが組めないと、別の事業所に頼むことになり、売り上げが減る。でも、ヘルパーは守らないといけない」と悩む。

 そうした被害の情報を、女性の事業所では全員が共有し、被害があれば男性と代わるようにしているが、セクハラをする男性に限って女性ヘルパーを望む。事業所の男性社長(51)は「加害者本人と話すと『金を払っているんだから当たり前』と、怒鳴られることもある」とため息交じりだ。

 介護職員らでつくる労働組合「日本介護クラフトユニオン」(東京都)は、こうした実態に関するアンケートを実施し、六月に結果を発表した。回答者二千四百十一人(女性二千百七人)のうち、利用者や家族からセクハラや暴言、暴力を受けたことがあると答えた組合員は74%に上った。複数回答で、あると答えた女性の32%が「不必要な接触を図る」「性的冗談を言う」などのセクハラを受け、70%が「攻撃的な態度で大声を出す」「『別の職員はやってくれた』などと言って強要する」などの暴力的な言動を受けていた。精神疾患になったという人もいた。

 しかし、被害を受けても上司や同僚に相談しなかった人も二割ほどいた。その理由は「介護職として我慢するのが当然という風潮がある」「(上司に)隙をつくる方が悪いと言われる」などだった。

 同労組会長の久保芳信さん(63)は「犯罪と言える内容もある。上司に相談しなかったり、しても解決しなかったりすることも、被害が表に出にくいことの要因なのではないか」と話す。

 国が定める訪問介護事業などの運営基準では、こうした行為を受けても、事業所はサービスの提供を断れない。同労組は八月、厚生労働省に対し、事業者がサービス提供を断ることができる正当な理由の一つに、ハラスメントを盛り込むことや、二人での訪問介護をする場合の利用者負担の補助などを求めた。今後、組合員の相談窓口設置などに取り組む協定の締結も進める。

 

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