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【暮らし】

<放り出された障害者 大量解雇から1年> (上)見つからない再就職先

1年前にメモした失業手当の説明書を見て「今は親に頼っているので、仕事を早く見つけたい」と男性は話す=名古屋市内で

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 全国各地で一般就労が難しい障害者が働く就労継続支援A型事業所(A型)が破綻し、働いていた障害者が一斉に解雇された問題から一年余り。名古屋市などでA型を運営していた企業「障がい者支援機構」を解雇された人の中には、いまだ再就職先が見つからないなどで、生活を再建できないままの人もいる。事業者の不適切な運営などのあおりを食った人たちや支援する人らは今、何を思うのか。(出口有紀)

 「七月上旬で失業手当がなくなることは分かっていたけれど、今後、どうしたらいいのか」。統合失調症がある名古屋市の男性(45)は、失業手当を受給するための雇用保険受給資格者証に「支給終了」の赤い印字が押されているのを見て、ため息をつく。失業手当がない今は、月約六万五千円の障害年金が収入の全て。同居する七十代の両親の年金を頼らざるをえない。

 男性は二〇一三年八月、支援機構が名古屋市北区で運営していたA型「パドマ」と雇用契約を結び働き始めた。給料は月六万円ほど。パドマ閉鎖後の約一年間は、ほぼ同額の失業保険を受給できた。以前から支出は必要最低限に抑えてきたが、蓄えはほとんどない。「節約しても生活は完全に親頼み。両親の気力、体力があるうちに再就職したい」

 男性は勤めていた会社でパワハラを受け、〇〇年に退職。家に引きこもった後、病院のデイケア施設に通い、病院の相談支援窓口からパドマを紹介された。

 担当したのは、女性用の靴下の梱包(こんぽう)などの内職。半年ほどは大変で仕方なかったが、しばらく平日の一日を休みにしたり、出社時間を遅くしたりと配慮してくれた。事業による利益でなく、国の給付金に頼った運営だったために可能だったことだが、男性にとっては働きやすく、出勤して四時間働き、帰宅してゆっくりするという流れができた。

 勤務を午前のみにするなど、働き続けられるようにシフトを組んでもらっている人が男性の他にもいた。「他のA型では、欠勤や遅刻などがあると契約してもらえない。時給は最低賃金でも、家にいるよりはまし。働くところはここしかないと思っていた」と話す。

 しかし、パドマは昨年七月二十五日に何の事前説明もなく閉鎖。職員や利用する障害者に支払われるはずの給料も、振り込まれなかった。職員への給料の遅配は、前年秋から始まっていたため「やっぱりか」と思った。翌日、職員から廃業を知らされた。

 男性は再就職先を探しているが、A型は視野に入れていない。不適切な運営で閉鎖となったA型はパドマだけではない。「勤めた先がまた悪いA型だったら…」と不安になるからだ。収入も考えて一般企業の障害者枠での就職を目指し、昨秋から就労移行支援施設で職業訓練を受けている。

 しかし、ネックとなるのはやはり勤務時間だ。希望する職種で話があったが、一日七時間四十五分働くことが条件であきらめた。「疲れやすい症状があることを考えたら無理。一日五時間働くのがやっとだと思う」。就活を続けているが、履歴書にこのことは書けないでいる。

<障害者の一斉解雇> 国の給付金などを頼みに、事業で利益を出す努力を怠り、障害者に適切な仕事をさせないA型があるとして、国は昨春、給付金などを利用者の給与に充てないようA型への指導を強化することを地方自治体に通知。これを発端に名古屋市や岡山県倉敷市、札幌市などのA型が給与を支払えなくなり事業を停止。障害者らが一斉に解雇された。名古屋市の「障がい者支援機構」が運営していた全国6カ所のA型は昨年7月に閉鎖され、計156人が解雇された。

 

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