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【暮らし】

<どうする相続>「公正証書」が安全、確実 遺産「争族」回避へ遺言書を

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 遺言書がないばかりに、残された家族らが遺産を巡って争う「争族」が絶えない。遺言書は、本人が自筆で作る「自筆証書遺言」と公証人が作成に関わる「公正証書遺言」の二種類に大別できる。法改正により来年一月半ば以降、自筆証書遺言の要件(法律で決められた書式など)が緩和され、書きやすくなる。それぞれの特徴を理解し、自分に合った遺言書を家族に残したい。 (砂本紅年)

 都内在住の女性(85)は今春、自宅で転び骨折した。入院を機に、自分の死後を真剣に考えるように。亡き夫から受け継いだ土地付き一戸建ての自宅と、三千万円程度の金融資産があり、子どもは三人いる。女性も親の遺産分けで苦労した経験があり、「子どもに同じ思いをさせたくない」と遺言を書こうと決心した。

 当初は費用がかからない自筆証書遺言を考えていた。司法書士に相談したところ、「『争族』を避けるなら」と、法律の専門家である公証人が作成に関わる「公正証書遺言」を薦められたため、遺言書案の作成や登記簿謄本の収集などを司法書士に依頼した。費用は司法書士に約十万円、公証人に約八万円。「これで安心」。女性は胸をなでおろしている。

 「争族」回避のため、遺言書への関心が高まっている。よく利用されるのは自筆証書遺言と公正証書遺言。どんな特徴があるのだろう。

 相続問題に詳しいチェスナット司法書士法人(東京都港区)代表社員の元木翼さん(35)によると、自筆証書遺言は証人不要で、費用もかからない。しかしすべて手書きでなければならないため、高齢者は負担を感じやすい。自分で保管する場合が多く、紛失したり、隠されたり、改ざんされたりする可能性や、民法が定める方式に合わなかったり表現が曖昧になったりして無効になるケースも。

 遺言作成者が亡くなった後、「本当に本人が書いたのか」「本人に判断能力があったのか」などと効力を巡りトラブルになることもある。相続が始まると、相続人が家庭裁判所で遺言を確認する「検認」という手続きも必要。裁判所への申し立てから一〜二カ月程度かかり、手間がかかる。

 一方の公正証書遺言は、遺言を残す人が公証人に内容を伝えて遺言書を作ってもらう。あらかじめ弁護士や司法書士らに依頼し、アドバイスを受けるのが一般的だ。費用を払えば自宅や病院などでも作成できる。遺言書は公証役場で預かってもらえるので、紛失などの心配は基本ない。

 ただ費用は最低でも数万円かかる上、財産額や財産をもらう人の数が多いほど手数料が加算される。作成時に証人の立ち会いも必要だ。半面、内容チェック、本人の判断能力や意思の確認を公証人が行うので、手間がかかるものの「争族」を避ける効果が高いといえる。元木さんは「安全で確実な公正証書遺言がお薦め。元気なうちに検討を」と呼び掛けている。

◆自筆証書の要件緩和

 民法改正で、来年一月十三日から自筆証書遺言の要件が緩和される。財産目録は各ページに署名、押印すれば、パソコンによる作成や不動産登記簿のコピーでもよくなり、手間が省ける。

 さらに二〇二〇年七月までに、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる新しい制度が始まる。手数料はかかるが、紛失などの心配がなくなり、検認も不要になる。

 ただ、本人が法務局に出向いて申請する必要があり、寝たきりや遠方の人は使いにくい。保管を担当する職員は遺言書の書式を確認するだけで、遺言作成者の判断能力の有無など有効性を判断するわけではない。法務局に保管したからといって「争族」を回避できるわけではなく、法改正後も、公正証書遺言を検討したい。

◆困り事や体験談募集

 相続に関する困り事や体験談を募集します。メール=seikatut@tokyo-np.co.jp  ファクス03(3595)6931。件名に「どうする相続」と記入を。

 

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