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【暮らし】

<放り出された障害者 大量解雇から1年> (下)安心して働き続けるために

 一般就労が難しい障害者が働く就労継続支援A型事業所(A型)。昨夏、全国で相次いだようなA型の閉鎖による障害者の一斉解雇の再発を防ぎ、障害者が安心して働いていく場とするには、どうしたらよいか。2人の識者に聞いた。 (出口有紀)

◆国は状況把握し支援を 障害者労組書記長・谷本樹保

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 障害者自立支援法(現障害者総合支援法)が施行された二〇〇六年以降、障害者の福祉サービスは契約に基づき、障害者自身が自己責任でサービスを提供する事業所を選ぶようになった。しかし、A型は福祉施策だ。事業所に対する国の給付もあるのだから、利用者に全ての責任を負わせて、「この事業所を選んだ私が悪い」と言わせるようではいけない。

 昨夏に職を失った人の中には、失業手当を受給できる期間を過ぎても、次の職が見つからない人もいれば、新たな仕事に定着できなかった人もいる。手当を給付するだけでなく、状況を把握して支える方策を考え、実施していく責任が行政にはある。

 赤字のA型は、経営改善計画書を出すことになったが、黒字にする期限の縛りがない。これでは、国が求めるA型になる見通しが立たないのではないか。

 これほど大規模ではなかったが、過去にもA型の閉鎖はあった。障害者がすぐ再就職でき、困る人が少なかったこともあり、あまり問題視されなかった。しかし、問題を受けて実施された今春の報酬改定で、給付金を受ける基準が厳しくなり、A型の運営は難しくなった。利用者も再就職しづらくなるだろう。

 昨年、設立された「A型問題の被害者を支える会あいち」に、私も加わっている。当事者の声をくみ取って提言していきたい。

<たにもと・しげやす> 1966年、京都市生まれ。専門学校で社会福祉を学び、87年から約25年間、同市内にある障害者の共同作業所で働く。2015年に障害者の労働組合を設立し、書記長を務めている。先天的に左手の指がない障害がある。

◆労働と福祉の窓口一つに 法政大名誉教授・松井亮輔

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 一般企業では働けないが、できる範囲で働きたいという人の受け皿がA型だ。利用者は会社勤めの人と同じように働くことを求められていない。国はA型に自前で稼ぐよう求めているが、A型という仕組みがどういう障害者を利用者に見込んでいるのか、考えないといけない。

 日本では、障害者一人一人の働く能力を考慮し、A型、就労継続支援B型事業所(B型、利用者と雇用契約を結ばない)、一般企業の障害者枠など、どの選択肢が適切かを判定する仕組みがない。A型の場合、ハローワークが就職先を紹介するが、その後の支援は、労働と福祉に窓口が分かれる。一本化すれば、両部門が一体的に動ける。

 働き方も問題だ。現状、A型は障害者の雇用保障の役割も担っており、誰もができる内職のような仕事が多い。しかし、それでは物足りず生きがいにはならないという人もいる。さらに、内職は単価が安く、七割のA型が赤字に陥っている。とはいえ、能力が高い障害者だけを集めて収益を上げればいいということではない。低い人にも対応する方策は欠かせない。

 今後も、障害者の大量解雇は続くと思う。A型の運営者の半数以上を占める営利企業は、本当に障害者の支援を考えているか。もうけたいという気持ちだけなら、国が運営基準や報酬を厳しくするほど、A型の運営をやめていくだろう。

<まつい・りょうすけ> 1939年、兵庫県生まれ。国際基督教大卒。国際労働機関(ILO)の職業リハビリテーションアドバイザーなどを務め、2010年に法政大名誉教授。日本障害者リハビリテーション協会副会長も務める。専門は障害者福祉など。

 

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