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【暮らし】

覚えて安心、山の応急手当て 救助必要かまず判断

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 紅葉シーズンを迎え、登山やハイキングを楽しむ人も多いだろう。中高齢者が多く、病院から遠く離れた山中で、けがをしたり、体に異変が起きたりした場合は心配だ。登山家で、山での応急処置に詳しい整形外科医の金田正樹さん(70)に心構えや対処法を聞いた。 (砂本紅年)

 金田さんも登山中、傷病者と居合わせる機会が何度もあり、応急処置を施したこともある。山では救急搬送に時間がかかるため、登山者も最低限のファーストエイド(応急手当て)の知識が必要だ。「一番大切なのは、傷病者の重症度、緊急度を見極め、今すぐ救助を呼ばなければいけないのかどうか判断する力」と強調する。

 まず、命の危機に直面していないか確認する。脳、脊髄、肺、心臓、腹部などに傷病があると命にかかわる。

 「どうしました?」などと声をかけ、意識を評価する。「大丈夫です」などと答えられれば意識障害はない。一方、しどろもどろで意識がはっきりしない場合は、救助要請を考える。さらに目を開けないと重症度が高く、つねっても痛がらないと、さらに重症と判断する。

 心臓が動いているかは手首や首の脈拍で判断する。光を目に当てて、反応せず瞳孔が広がったままだと心停止状態と判断し、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始める。

 呼吸は胸の動きを見て、口や鼻に顔を近づけて空気の動きを見る。気道に雪や異物が詰まっているときは、手袋をした指を口の中に入れて異物をかき出そう。

 骨折は、骨が皮膚を突き破る場合を除き、重症度も緊急度も比較的高くないが、頻度は高い。骨折が疑われる場合、本人が一番痛がる場所を親指で強く押してみよう。「ギャッ」などと声を上げて痛がれば、骨折の可能性が高い。骨折すると多くは、直後から痛みで顔面蒼白(そうはく)になり、冷や汗や吐き気などが見られる。判断に迷った場合は、骨折を念頭に応急処置を。「山中では、悪い方に判断するのが鉄則です」

 携帯用救急セットには、穴を開けたペットボトルのふたを常備しておく。水入りペットボトルにつけ、水圧をかけた流水で、出血などの傷口を徹底的に洗う。骨折部位は、添え木でサンドイッチ状にはさみ、布や包帯などで巻いて固定。肌と木の間にはタオル、衣服などクッションとなるものを必ず入れる=図。

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 金田さんは今秋、救急科専門医の伊藤岳さんとの共著で、こうしたファーストエイドの知識を図入りで紹介した「図解 山の救急法−医学的根拠から応急処置法まで」(東京新聞刊=写真)を出版した。問い合わせは、東京新聞出版・社会事業部=電03(6910)2527=へ。

◆着替え、高カロリー食の準備を

 金田さんは、2009年夏に低体温症で8人が亡くなったトムラウシ山(北海道大雪山系)遭難事故を調査した経験があり、「山での『疲労凍死』といわれる事故は、低体温症が原因と考えられる」と注意を呼び掛ける。

 事故当時、風速20メートル以上の強風で、体は急速に冷えた。夏山の悪天候に防寒の着替えが追いつかず、低体温症になってから死亡まで2時間しかかからなかったという。

 「早期に意識障害を起こすのが低体温症の特徴」。体がぬれ、風が強いと、体温は急激に低下。糖質不足で体温を上げるためのエネルギーがないと、全身の震え、意識障害を招く。

 山には、風雨をよける簡易テントや着替え、高カロリー食などを持って行きたい。「都市部でも突然の豪雨でびしょぬれになり、低体温症になる事例がある」と話している。

 

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