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【暮らし】

娘が撮った「母の認知症」「老老介護」 「ぼけますから、よろしくお願いします。」 

「映画を見て、親に電話でもしてみようかと思ってもらえたら」と話す信友直子さん=東京都港区で

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 認知症のある87歳の母を95歳の父が支える−。広島県の実家で暮らす両親を、東京に住む一人娘の映画監督(56)が撮影したドキュメンタリー映画が近く封切られる。昨年の正月、母から掛けられた言葉「ぼけますから、よろしくお願いします。」がタイトルだ。認知症や老老介護、遠距離介護といった問題に直面する家族を、ありのままに捉えた。 (五十住和樹)

 撮影・監督したのは、引きこもりなど社会的なテーマでドキュメンタリーを撮り続けている信友直子さん。二〇〇一年正月から、故郷の広島県呉市に帰省する機会を利用し、両親を撮り始めた。「一人っ子で独身。家族は両親だけ。自分が寂しくならないように撮りためていた」

 社交的だった母文子さんの言動がおかしくなり始めたのは一三年。翌年にアルツハイマー型認知症と診断された。信友さんは帰省を二カ月に一回に増やし、食事の準備や病院への付き添いなどの介護をしながら、母と、それを支える父良則さんの日常を撮影。「娘が撮った母の認知症」などのタイトルで三回、テレビ番組で放送した。

 映画はこれを基に、一四〜一七年の映像を中心に再編集した。「思っていた母が少しずつ自分の前から消えていく」。そんな苦悩を抱えながらも、撮り続けたのは「映像は今しか撮れない」という職業意識もあったという。

 映画では、認知症が進んだ文子さんが「自分だけ、のけものにして。死んでやる」と良則さんと大げんかする場面など、老老介護の現実をリアルに映し出す。たらいで洗濯したり、包丁でリンゴをむいたりして「初めての家事」を頑張る良則さんの様子も。娘に向かって「お母さん、おかしいじゃろう。何も分からんようになっていてごめん」と語る母の姿も、泣きながらカメラに収めた。

 信友さんの勧めもあり、両親は一六年に初めて要介護認定を受け、文子さんは要介護1だった。良則さんは「非該当」のためサービスを受けられない。買い物袋を両手に提げて何度も休みながら歩く父の姿に、老いの厳しさも重ね描いた。

 信友さんは仕事を辞めて実家で介護した方がいいのではと悩んだ。しかし「自分のやりたいことを続けなさい」と言う良則さんの思いをくみ、実家に毎日電話し、仕事の合間に帰省しては自動消火のガスこんろに買い替えるなど遠距離介護を続けることにした。

 今はホームヘルパーが週一回訪問介護に入り、文子さんはデイサービスにも通う。信友さんは「介護は一人で抱え込まずプロとシェアをすると、家族も心に余裕を持って接することができ、親とうまくいくと思う」と遠距離介護のコツを話す。

 十一月三日から東京都中野区のポレポレ東中野で、同二十四日から名古屋市千種区の名古屋シネマテークで上映する。浜松市中区のシネマイーラや、飯田センゲキシネマズなど長野県では来年公開予定。百二分。

◆異変察知する対策を

 都会に住む息子や娘たちは、故郷の親の老いにどう向き合ったらよいか。遠距離介護のセミナーなどを開いているNPO法人「パオッコ」理事長の太田差惠子さん(57)は「『子どもに迷惑を掛けたくない』と、入院や手術をしても子どもに連絡しない親は多い。便りがないのは元気な証拠とは限らない」と、電話などで近況の確認が必要とする。

 異変を察知するため「普段の親の生活パターンを知ることから始めて」と太田さん。元気なうちは帰省時に、話し相手になったり、変わった様子がないかを確認したりする。

 介護状態になった場合、現状より介護の度合いが悪化しないよう予防することが大切だ。太田さんは「無理をせず、離れていてもできることを考えて」とアドバイスする。

 

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