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【暮らし】

<矛盾だらけの障害年金>主治医と認定医の隔たり 書面のみの審査に限界

障害年金の診断書を使って審査のポイントについて話す認定医の男性=東京都内で

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 障害年金は、主治医による診断書など書面のみで支給か不支給かの判定がなされている。ただ、最も重視される診断書の書き方は主治医任せで、患者の病状や障害の程度が正確に反映されるとは限らないといった問題がある。診断書を基に判定を下す医師(認定医)も、昨年四月の体制変更で、経験のない医師が大幅に増加。「正確な審査ができるのか」と当の認定医からも疑問視する声が上がっている。 (添田隆典)

 「一人の診断書にかけられる時間は平均一分」。認定医を務める東京都内の精神科医の男性(69)は、審査業務の実情をそう語る。

 男性は医師歴四十年超。日本年金機構から委託を受け、十年以上前から、毎月三回、うつ病などの精神疾患の患者や知的障害者の審査を請け負っている。審査が集中する時期には一度に百〜百五十人分の診断書を見ないといけないが、開業医の仕事もあるため、一回二時間と決まっている。

 精神の診断書はA3サイズ一枚。表面に、病状やその程度など、裏面に食事や清潔保持、対人関係など七項目の日常生活能力について、「できる」「助言や指導を必要とする」など四段階で主治医が回答する欄が並ぶ。時間的な制約から認定医が申請者本人を診察することはない。このため、「主治医として障害年金の診断書を書くなど、医師として相当の経験を積んでいないと、正確な判定を導くのは難しい」と話す。

 障害年金はこれまで、都道府県ごとに認定医の委託を受けた医師が審査業務にあたっていた。しかし、不支給となる人の割合に最大六倍の地域差があることが発覚し、昨年四月、東京に一元化された。これに伴い、機構は首都圏近郊で少なくとも六十人の認定医と新たに契約。大半が審査業務は未経験で、三百人いる認定医の五分の一を占める。通常の業務とは異なる認定医の仕事を進んで引き受ける医師は少なく、「未経験の認定医が増えれば、その分だけ短時間で正確な判定は難しくなる」と、男性は不安視する。

 書面のみの審査方法を疑問視する声も。昨年三月まで大阪府で認定医を務めた精神科医の古屋穎児さん(79)=奈良県生駒市=は「書面のみで審査している限り、認定医の判定には限界がある」と指摘する。

 障害程度の判定では、検査数値だけでなく、日常生活でどれほどの困難を抱えているかも重要な指標となる。病気やけがの程度は同じでも、日常生活への影響は人によって異なるためだ。ただ、主治医によっては治療に直結する検査数値を重視するあまり、生活状況に関する記述が不十分など、診断書の内容にはかなりばらつきがあるという。

 それでも、「認定医としては診断書を基に判断するしかない」と古屋さん。「障害年金を必ず受けられるとうたって、重症に装った診断書が出てきても見抜くのは難しいだろう」と懸念する。

 前出の精神科医の男性も、通常のカルテとは異なる診断書の書き方をきちんと理解しないまま記入している医師は多いと感じるという。このため、「主治医が正確な診断書を書けるかが審査の精度を高めるうえで重要。そのためには障害年金の理解も含めた医師への教育が必要だ」と話す。

 

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