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【暮らし】

育休復帰の部下と上司 遠慮ですれ違い 支援研修に「逆の立場疑似体験」

上司(左)と育児中の部下(右)、それぞれの立場を逆にして「育休復帰後の働き方」について面談をする研修=大阪市の大阪ガス本社で

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 育児休業(育休)から復帰した女性の中には、キャリアアップしたいと望みながらも、仕事と育児の両立への不安を抱えている人がいる。一方、上司は子育て中の女性社員に経験を積ませたくても、負担を軽減しようと仕事の要求を控えめにしがちだ。こうしたズレを解消するため、上司と部下が立場を入れ替えて話し合うことで相手の葛藤を身をもって体験する、ユニークな育休復帰支援研修がある。どんな取り組みなのか。 (今川綾音)

 「育休復帰後の働き方について、社員と上司、それぞれの立場を逆にして面談してみましょう」

 大阪ガス(本社・大阪市)で九月に行われた育休者の復帰支援研修。人材育成会社「スリール」(本社・東京都港区)が開発・実施しているプログラムに、育児中の女性社員ら二十三人と上司二十四人が参加し、逆の立場でロールプレーイングに挑んだ。

 上司と部下それぞれの設定を用意。「子の夜泣きがひどく、夫の帰りも遅い。仕事は頑張りたいが、完璧にできるか不安を抱える」部下と、「部下に働き方のモデル役を期待したいが、頑張らせすぎてもいけない」と伝え方に迷う上司の組み合わせで面談した。

 逆の立場になることで、相手の本音を引き出す大変さや、相手への思いやりがあっても伝わらない葛藤を感じ、互いの状況への理解を促すのが目的。同社人事部ダイバーシティ推進センター副所長の伊藤郁恵さんは「上司と部下のズレ解消には本音の話し合いが必要と分かってほしい」と話す。

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 互いに希望や子の状況、周囲の協力体制などを伝え、聞き出す必要がある。実際に研修では、互いの状況を忖度(そんたく)し合い、本音では話せていなかったり、部下の状況を十分に把握できなかったりするケースも。二十代後半の女性社員は「どんな要求でも伝えてもらう方が上司としてはありがたいと感じた」と実感した。四十代後半の男性上司は「育児のため短時間で働く社員が、やる気と遠慮の間で、いかに葛藤しているかよく理解できた」と振り返る。

 研修は、女性社員の「育児とキャリアの両立に不安がある」という声を受け、二〇一四年度に始まった。ロールプレーイングのほか、講義や、三年後の理想の働き方を考える取り組みなど多岐にわたる。復帰して二年以内の女性社員と、その上司と社内の配偶者を対象にし、これまでに百三十二人が受講している。

 同社の総合職の女性比率は約一割。近年の新入社員に限れば約三割になる。現場技術職などの女性採用比率もこの五年間で5%から15%と増えた。伊藤さんは「将来、リーダー的な役割を担う女性社員の採用が増えている今、出産後も力を発揮できる環境を用意できるかどうかは会社にとっても重要」と話す。

 研修後、社員の意識には変化が出てきた。育児中の伊藤春佳さん(29)は「育児やキャリアについて面談ではいつも当たり障りなく話をしているが、次は気にしていることを率直に伝えたい」と話す。マネジャーの小原貴浩さん(47)は「どんなキャリアプランを持っているかや、今の悩みを聞いてみたい」と考えている。

 同社をはじめ十社近くで同様の研修を手掛けるスリール代表の堀江敦子さん(33)は、「企業や国の育休制度は整ってきたが、出産後に退職したり、やりがいのある仕事ができずにいる女性はまだ多い。企業には次の段階の支援が求められている」と指摘している。

 

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