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【暮らし】

認知症保険 相次いで登場 徘徊見守り費用などカバーも

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 認知症と診断されたときに一時金や年金を受け取れる「認知症保険」が、近年相次いで販売され、売り上げを伸ばしている。認知症の患者は身体的には問題がないケースが多く、介護サービスを十分使えなかったり、徘徊(はいかい)に備え見守りが必要だったりと費用がかさみやすいことが要因だ。当初は認知症になったときに備える保険だったが、10月から発症後でも家族が加入できる保険が登場。他人にけがをさせたり電車の運行を止めたりしたときに保険金が出るなど、補償内容も広がっている。 (河野紀子)

 認知症保険は、二〇一六年三月に太陽生命(東京)が売り出したのが始まり。二十〜八十五歳が加入でき、認知症と診断されたら最大三百万円の一時金が受け取れる。これまで約四十万件の契約があり、同社広報課の担当者は「予想を超える反響。特に六十歳以上の契約が多い」と話す。同年四月には、朝日生命(東京)も、認知症になったら一時金か年金が支給される保険を発売している。

 いずれも認知症になったときに備える保険で、発症した後は加入できなかったが、東京海上日動(東京)は今年十月、発症した患者を対象に家族が加入できる保険の販売を始めた。徘徊で行方不明となり一日以上見つからない場合、タクシー代など捜索にかかった費用を一回につき最大三十万円支払う。他人にけがをさせたり、線路へ立ち入って電車を止めたりして鉄道会社から損害賠償を求められたときには、最大一億円を補償する。

 この補償は、〇七年、愛知県大府市のJR東海道線共和駅構内に認知症の男性=当時(91)=が立ち入り、電車にはねられて死亡した事故が背景にある。JR東海は電車の運行に支障が出たとして、介護していた家族に損害賠償を求め、名古屋地裁に提訴。一審はJR東海の訴えを認めて家族に七百二十万円を支払うよう命令、二審では三百六十万円に額が下がったものの一審を支持した。一六年の上告審で、最高裁は男性と同居していた妻が要介護だったことを理由に、監督義務はなかったとしてJR東海の訴えを退ける逆転判決を言い渡した。ただ、介護を要する状態でなければ、家族の責任が問われる可能性は残された。

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 認知症の患者は年々増え、厚生労働省は今後も増え続けると予想している。一二年は四百六十二万人だったが、二五年は七百万人規模になると推定。高齢者の五人に一人が認知症となる見込みだ。

 「認知症の人と家族の会」(京都市)の阿部佳世事務局長(58)は「認知症患者は身体に問題がなければ要介護度は低くなり、介護保険を利用する際の自己負担は大きい。一方で家族の負担は重く、見守りのために仕事を辞めたり同居するために引っ越しを強いられたりすることもある」と指摘。「どれだけお金がかかるか見通しが立たず、不安を感じる人は多い」と話す。

 ただ、加入するかどうかは十分な検討が必要だ。認知症保険に詳しいファイナンシャルプランナーの内藤真弓さん(62)=東京=は「線路に立ち入ってしまう恐れがある場合は保険があると安心につながるが、だれもが徘徊するわけではない。どんな症状なのかを見極めたうえで、加入するかどうかを考えてほしい」と呼び掛ける。

 将来に備える保険でも「数十年にわたって保険料を払う代わりに、その間に貯蓄でためる方法もある。補償が手厚い分、保険料は割高になるので、メリットとデメリットをよく検討してほしい」と話した。

 

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