東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 12月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

失語症の就労 職場の協力が不可欠

写真

 脳卒中や交通事故などで脳の言語中枢がダメージを受け、話す、聞く、読む、書くことが困難になる失語症。患者には働き盛りの人も多いが、周囲との意思疎通が困難になるため、復職や再就労は難しい。当事者らでつくる団体の調査では、企業などの正社員で失語症になった人のうち、復職できた人は1割程度にとどまっている。 (山本真嗣)

 岐阜県の男性(35)は二年前、運送会社で配達中に脳出血を発症。右半身まひと失語症になり、今年五月に退社した。

 周囲の話していることは理解できるが、話すと時折言葉に詰まる。会社からは事務での復職を打診されたが「あいさつされても、言葉が続かないかもしれない。電話に出ることも難しい」と断った。

 小学生の娘が二人いるが、世帯の収入は失業手当と、今冬から正社員として働き始めた妻の給料が頼り。同県大垣市の就労移行支援事業所「GCC大垣校」でパソコンの扱い方などを学びながら二年以内の就労を目指している。

 NPO法人「日本失語症協議会」(東京)が二〇一五年に失語症の人を対象に行った調査(回答数約四百五十人)によると、発症前に働いていた人で、発症後も何らかの仕事をしていた人は39%。だが、企業などに雇用されていた正社員に限ると、「元の職場に戻れた」のは12%で、復職後に仕事を続けられたのはその六割だけだった。

 同協議会副理事長の園田尚美さん(71)によると、失語症の人の復職は障害者の中でも特に難しい。電話や会議などが苦手な人が多く、自ら辞めたり、退職に追い込まれたりするケースもあるという。

 再就労にも壁がある。四十代でくも膜下出血を患い、失語症となった岐阜県の元自営業の男性(57)は昨年、県内の公的機関に障害者枠でパートの事務職として雇われた。一一年から求職活動を始めたが、六年間に三十社以上の入社試験に落ちたという。面接で自己紹介を求められ、言葉が出ずに打ち切られたこともあった。

 新たな職場でも、当初は症状が同僚に十分共有されずに戸惑った。書類を他の部署に持って行くよう上司から口頭で指示されたが、書類の作成と誤解し、書類を作った翌日に間違いを指摘された。その後、指示は口頭だけでなく、必ず紙に書いてもらい、男性がその場で指示を読み上げて確認するように改善。以来、間違えることはなくなった。男性は「症状に合わせた配慮をしてもらうことで、働くことができる」と話す。

 また、協議会の調査では就労の難しさに比べ、福祉サービスを使える障害認定の厳しさを指摘する声も。身体障害者手帳は、失語症単独では六段階のうち三級と四級しかない。症状によっては手帳を受けられず、障害者雇用枠を利用できないケースも少なくない。

 園田さんは「まず、症状と必要な配慮を示した自分の“マニュアル”を作り、職場に伝えることが大切。その上で、職場は必要な配慮と環境整備をしてほしい」と話す。

◆HPで対応例紹介

 失語症者の就労や職場での支援に向け、障害者職業総合センター(千葉市)は、失語症の基礎知識や会話する際の対応例=表参照=などをまとめたリーフレット「失語症のある人の雇用支援のために」をホームページで公表している。

 書くことが苦手な人には、こまめに声掛けをするなどのポイントを提示。当事者が利用できる相談、支援機関の一覧も掲載している。(問)同センター=電043(297)9067

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報