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【暮らし】

ボルダリング 五輪で注目競技 本紙記者が初挑戦

95度の壁に挑戦する今川綾音記者=写真はいずれも東京都新宿区のベータクライミングジムで

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 2020年東京五輪の正式種目となったスポーツクライミング。中でも時間内にいくつ登れるかを競う種目・ボルダリングは、軽装備で気軽に始められるほか、今年も加速した「コト消費」の流れにも乗って、人気が高まっている。醍醐味(だいごみ)を感じようと記者が初挑戦した。 (今川綾音)

◆落ちる…滑る…難関次々に

 え、私がやるんですか。大学までバスケット部だったが、ここ10年は運動ゼロ。子どもの抱っこ専門だった。40歳になり守りに入りたくなる気持ちを振り払い、東京都新宿区のボルダリングジム「ベータクライミングジム」を訪ねた。

 高さ4.3メートルの壁に色とりどりの石。手前にせり出す壁にひるみそうになりながら、スタッフの木村卓斗さん(27)から簡単なルールや登り方の説明を受けた。いざ挑戦。壁の角度もいろいろあるが、まずは95度の壁で、一番易しいコースを選んだ。垂直の壁に張り付くだけでも結構きつい。でも、足元の石を踏み締め、石をつかんだ手にぐっと力を入れて体を引き上げていく手応えは楽しい。

 「いいね、うまいよ」。木村さんの声に調子に乗り、コースのレベルを徐々に上げていった。

 4コース目で行き詰まった。体の左側にある石に両手を掛けたら、バランスを失い落下した。「90度ねじって体の右側を壁に付けてみて」。再挑戦。お、安定した。そうか、壁に正対しなくてもいいんだ。

 すぐに、次の難関が。直径10センチほどの丸い石を右手から左手にうまく持ち替えられない。石をつかんだ左手が滑る。次の石に伸ばした右手が空を切る。無念…。後ろからたたかれて落ちるハエの姿が浮かぶ。

◆命綱なしで挑戦

 クライミングの中でも、壁に付いた人工の石「ホールド」を命綱なしでつかんで登るのがボルダリング。一般向けのジムでは石のそばにコースのレベルを示す印がある。挑戦者は同じ印の付いた石をゴールまでたどる。

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◆試行錯誤が醍醐味

 同じところで4度失敗。両足で安全に着地することばかりうまくなっていく。そろそろあきらめて違うコースにしようかな。でも、どうしてもこれを登りきりたい。休憩しながら、壁を見つめて手足の運びと体の向きをイメージする。

 これで最後、と決めて石に手を掛けた。「焦らないで右手から左手に持ち替えて、つま先に力を入れて…」。何度もつかみそこなった石についに右手が届き、続くゴールの石を両手でつかんだ。

 この達成感、この1年で一番かも−。笑顔で振り返ろうとした瞬間、踏み締めていた足がずれ、再び宙を舞った。

 終わってみると、何ともスカッとした気分。次につかむ石、動くルートのことだけを考え続けたシンプルな時間は、純粋に楽しかった。どうやって登るか試行錯誤する面白さを、挑戦して初めて知った。

◆人気↑ 遊園地、住宅…「壁」各地に登場

 人気の高まりを受けて、各地にさまざまな「壁」が登場している。

 栃木県那須町にある遊園地「那須ハイランドパーク」は今年三月、映像を投影した壁でアトラクションを楽しめる「デジタルボルダリング」を導入した。

 高さ三・三メートル、幅四メートルの壁に、宇宙空間や雪山など壮大な景色が映し出される。現れるコウモリをもぐらたたきのようにタッチして得点を競うゲームや、光線に触れないように壁を動くゲームなども楽しめる。

 「壁付き」の住宅を売り出すメーカーも。パナソニックホームズは、教育事業を展開する学研ホールディングスと共同開発した子育て世帯向けの住宅に、ボルダリング用の壁を設置する。「空間いっぱいを使って体を動かすボルダリングで、子どもの運動能力や感覚能力を育てることができます」

 スポーツ用品店「スポーツオーソリティ」を展開する「メガスポーツ」は二〇一六年から順次、店内に高さ約四メートルの壁を設置したボルダリングコーナーを導入。現在は二十店舗にある。子ども向けの壁がある店もある。

 同社でボルダリング事業を担当する長谷川まりえさんは、「東京オリンピックの正式種目になってから、体験したいという人が増えている。達成感や満足感を味わえる上、気軽にできることが人気の理由では」と分析。「親子の共通の趣味にしたい」「ダイエットに役立てたい」など目的も多様で、年齢や性別にかかわらず関心は高いという。カラフルな石を使った壁が多く、「今年は特にインスタ映えするから、と楽しむ人も多かった」という。 (寺本康弘)

幻想的な映像を投影した壁で楽しめるデジタルボルダリング=那須ハイランドパーク提供

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