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【暮らし】

ALSと生きる姿見て 自身も脳腫瘍抱える写真家 患者の懸命な日常追う

高野元さんとコミュニケーションを取りながら、撮影に臨む武本花奈さん(右)=川崎市で

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 運動神経が壊れ、呼吸器なども含めて体中の筋肉が動かなくなっていく難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」。さいたま市の写真家武本花奈さん(45)は、4年前から患者を撮り続けている。自身も脳に腫瘍があり、「病気と共に生きる姿を見てほしい」と患者たちを写真に収め、生きる力をもらっているという。 (花井康子)

 「今日は顔色がいいですね」。カメラを構えた武本さんが話し掛けると、川崎市の高野元(はじめ)さん(53)の表情がほぐれ、ほほ笑んだ。高野さんは五年ほど前にALSを発症。自力では移動したり、話したりすることができない。

 撮影中も体調や生活、仲間の患者の近況など、さまざまなことを聞き、撮り終えた後もしばらく会話が続く。「患者さんを一人にしておきたくない。少しでも気持ちを理解したいから」。出来上がった作品は、パソコンを操作しながら、にこやかな表情をした高野さんが写った一枚だった。

 武本さんは二〇一四年から、関東や中部地方のALS患者を中心に写真を撮り続けている。モデルになったのは、これまでに十八人。寝たきりの人がほとんどで、途中で具合が悪くなったり、トイレなどの介助が入ったりして、何度も自宅や病院に通って撮ることも珍しくない。

 誤嚥(ごえん)を防ぐ手術などで声を失った人もいる。わずかに動く手足の指でパソコンを操作して言いたいことを伝えられる人もいるが、口の形や、見つめる文字盤の文字を家族らが追うことで、思いを伝える人もいる。

 撮影以上に武本さんが時間をかけるのはコミュニケーション。「どうすれば心地よく撮らせてもらえるか。ファインダーをのぞきながら、患者さんの状態を感じるよう心掛けている」

 撮影を始めたのは、自身の病気がきっかけ。一三年ごろ、脳に腫瘍が見つかった。当時、長男は小学一年生。不安に駆られ、脳や神経の病気についてインターネットで調べるうちに、ALSという病気を知った。

車椅子で出掛ける患者を写した作品(武本さん提供)

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 いまのところ治療法がなく、少しずつ体が動かなくなっていく。しかし、意識や五感などの機能には問題がないため、ほとんどの患者がつらくもどかしい思いを抱えている。

 「死を意識することもありながら、懸命に生きようとする彼らの姿に、大きなメッセージ性を感じた」。会員制交流サイト(SNS)などでつながった多くの患者を撮り続けるうちに、自分自身も病気を不安がるよりも、毎日を生きることに懸命になった。

 昨年からは、作品展を各地で開いている。名古屋市の飯島伸博さん(42)も、イベントで武本さんと知り合い、モデルとなった一人。一三年、右手の薬指が伸ばせなくなり、異変に気が付いた。現在、静岡市のJR静岡駅ビル「パルシェ」で開催中の作品展にも、飯島さんの写真が飾られている。飯島さんは「病気の姿が出ることに抵抗もあるが、自分の写真を見て誰かが勇気づけられたり、病気について考えたりするきっかけになれば」と話す。

 写真展ではベッドでくつろいだり、身近な人とコミュニケーションを取ったりする患者たちの写真十五点が並び、患者の言葉が添えられている。武本さんは「撮影を通じて人は立ち上がれるんだと実感している。命のきらめきを感じ、生きざまを見てほしい」と話す。

◆静岡で写真展

 写真展「THIS IS ALS」は20日まで。前10〜後8(20日は早め終了の可能性も)、パルシェ4階エレベーター横で。無料。(問)日本ALS協会静岡県支部写真展事務局電子メール=thisisals.shizuoka@gmail.com=へ。

 

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