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【暮らし】

「混合介護」広がる利便 保険外サービス提供 国が後押し

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 ペットの世話や庭掃除など介護保険の対象外となっているサービスを、身体介護などの保険内サービスと組み合わせて提供する「混合介護」。厚生労働省は昨年9月に都道府県に出した通知で「保険外サービスの充実も重要」と初めて明記し、後押しする姿勢に転換した。多様化するニーズに応える目的だが、「地域や所得によって『サービス格差』につながる」との懸念もある。 (五十住和樹)

 東京都は二〇一八年度から国家戦略特区を活用し、全国初の混合介護のモデル事業を豊島区で始めた。保険外サービスの基盤整備や事業者の収益機会を増やすことなどが狙いだ。九事業者が参加している。

 長男夫婦と同居する男性(99)は、昼間は一人ですごす。夫婦は「最近は転倒が心配」と、地元事業者「本町まんぞく介護」に保険外の見守りサービスを頼んだ。

 居室に設置したセンサーが「人の動きを感知しない」など異常を検知すると、ヘルパーや家族にメールなどで知らせる。専用アプリで室内の温湿度が分かり、熱中症のほかインフルエンザなどの危険度もチェックできる。午前九〜午後六時なら必要に応じてヘルパーが電話や訪問で安否確認をする。月額で四千九百八十円だ。

 この男性の居室のセンサーが昨年九月、熱中症危険指数を超えたと感知し、自動で通知を受けたヘルパーが出向いてエアコンの設定温度を調整した。同事業者の西谷剛社長(40)は「視力が低下した人や認知症の人は、冷暖房を押し間違えるリモコンの誤操作がよくある」と話す。

 別の事業所は、独居の女性から窓やベランダの掃除など保険外の居宅内サービス(一時間二千七百円)の依頼を受けた。ケアマネジャー女性(41)は「関節痛で自分では掃除が困難で、ヘルパーが保険内の部屋掃除などをしていた。きれい好きな人で『汚れた窓ではつらい』と保険外の掃除も希望した」と話す。このほか、ペットの世話や毎週一回の散歩の同行を頼んだ女性もいた。

 厚労省は現行制度でも、保険内と保険外のサービスを明確に区分するなどの条件で併用(混合介護)を認めてきた。だが、都がまとめた資料では、保険外サービスを提供する事業者は全体の49・1%にとどまった。都は二〇二一年三月までモデル事業を実施。どんな保険外サービスが求められているか、ニーズの調査や課題の洗い出しを進める。

◆サービス格差拡大 懸念

 「保険外のサービスを段階的に増やして、保険内を減らす可能性が大きい。調理や掃除など生活支援は、保険外に移したい国の思惑が見え隠れする」。東洋大准教授(介護福祉学)の高野龍昭さん(54)は、混合介護が拡大される狙いをこう推測する。

 保険内サービスの場合、利用者の負担は費用の一〜三割だが、保険外は全額自己負担。保険外が拡大すれば保険財政の改善が図れ、メニューが充実することで事業者の収益改善や介護職員の賃金アップも期待できる。ただ、「人手不足が深刻な状況で、サービスを提供する人員をどう確保するか。できなければ混合介護は絵に描いた餅になる」と高野さんは指摘する。

 懸念されるのは、自己負担では支払う余裕がない人との格差拡大だ。さらに、過疎地では保険外メニューが整わず、都心部とのサービス格差が広がる可能性も大きい。

 足が弱って外出が難しい一人暮らしの高齢者には、ペットの散歩や、車いすでの外出支援などの保険外サービスが役に立つ。高野さんは「混合介護が広がると悪質業者の参入も考えられる。高齢者を守りつつ、サービスが自立支援を阻害しないためにも、質の確保を見極めるケアマネジャーの役割が重要になってくる」と話す。

 

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