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【悩みの小部屋】

<法律お助け隊 君和田伸仁弁護士>  社内資格の研修費、返還誓約書に疑問 

 娘は今年三月に大学を卒業し、四月から健康機器を販売する会社への就職が決まっています。会社は、健康機器の知識についての社内資格を取得させるため、入社前研修を受けさせ、娘はこれまで七回参加しました。先日、入社後二年以内に退職した場合、研修費用(会場費など二十万円)を返還する旨の誓約書を提出するよう言われました。応じる必要がありますか。 (東京都・主婦 50代)

◆無効の取り決め サイン義務なし

 社員が資格を取り、それを生かして働くことは、企業にとっても有益です。そのため、資格取得費用を企業が負担する代わりに、資格取得後、一定期間内に退職した場合には、企業が負担した費用を返還させる合意を求められることがあります。

 しかしこのような合意で社員は退職の自由が制約され、足かせになります。労働基準法一六条は、退職の自由を保障するため、労働契約の不履行について違約金などを払わせる約束をすることを禁じています。費用の返還合意がこれに違反しないかが問題となります。

 合意が有効であるかどうかは(1)資格が退職後にも使えるものか(2)資格取得や研修への参加が業務の一環か、あるいは社員の自由意思に委ねられているものか(3)資格取得後に義務付けられる勤務期間が長期に及ぶか−などを総合的に考慮して、判断されます。過去の裁判例では、病院による看護師見習に対する看護学校就学費用の返還合意を無効としたもの、タクシー会社による普通二種免許取得費用の返還合意を有効としたものなど、ケースによって判断が分かれます。

 娘さんのケースでは、研修によって得られるのは「社内資格」であり、その資格が退職後に使えるとは思えません。また、入社前研修への参加は、会社の指示によるものと判断できるでしょう。仮に誓約書にサインをしても、誓約書は無効となると思われます。無効となる誓約書にサインする義務もありません。

 サインを拒めば、内定取り消しといった不利益を受けるかもしれません。しかしそのようなことをする会社は「ブラック企業」に他なりません。入社そのものを見直した方がよいかもしれません。大学にも相談をしてください。

 

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