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【ペット大好き】

大倉摩矢子さんとカメQ 大けがから生還 ぽっちゃり成長

大倉摩矢子さんが持つと首や足をよく動かすカメQ。飼い主に似てパフォーマンス上手?=埼玉県内で

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★クサガメ(オス 推定14歳)

 偶然保護したペットを飼う人は少なくないが、目の前で交通事故に遭った動物を助けて飼っている人はそれほど多くはないだろう。まして、それがカメというのは…。

 舞踏家の大倉摩矢子さんが、車にひかれた「カメQ」を保護したのは十一年前。自宅近くの荒川土手(埼玉)でウオーキングをしていた時だった。トラックが走り過ぎた路上に、何やらうごめく物が。近寄ると手のひらほどの大きさのカメが、苦しそうにもがいていたのだ。

 「甲羅が三カ所くらい割れて血が出ていました。思わず首に巻いていたタオルでくるみ、連れ帰りました」

 金魚や小鳥は飼ったが、カメは経験がない。野生なのかペットなのかも分からない。

 近くの動物病院に聞くと「カメは診られません」。隣町のカメ専門店に電話してみると、カメの動物病院がいくつか先の駅にあることを教えられて、カメをバケツに入れて電車に飛び乗った。

 獣医師はエックス線撮影をし、カメが片肺を損傷し、複雑骨折していると説明。そして大倉さんに聞いた。「最近たくさんのカメが捨てられて、大変問題になっています。治療の前に、あなたはこのカメをずっと飼うと約束してくれますか?」。大倉さんは思わず「はい!」と答えた。

 「なぜ、あの時このカメを飼おうと思ったのか自分でもよく分かりません。ただ、何とかしてやりたいと。今思えば、神様が飼う機会を与えてくださったのかも」

 その日は折しも九月九日の「救急の日」だったので、カメQと名付けた。

 獣医師の指示で、家に「カメ集中治療室」を作った。水槽に砂利を敷き、それが漬かる程度の水を入れたものだ。甲羅とおなかをパテで固定されたカメQを寝かせて見守った。数日は目を開けず体も動かさなかったが、徐々に回復。その冬は冬眠せず食べまくった。

 春に病院に連れていくと、「これじゃ肥満ですよ! お尻の肉が甲羅からはみ出ているじゃないですか」と言われ、安心し、大笑いした。

 「奇跡的な生還を遂げたカメQの姿に毎日感動し、すごいエネルギーをもらいました」

 助けたカメが、大倉さんのパフォーマンスの幅を広げてくれた。数年後のソロ舞台で、カメQが事故に遭い、回復していく様子をイメージした作品「明日へ」を発表した。

 年を経るごとに、カメQは大きくなり、傷痕は小さくなっていく。居場所は玄関前の水槽。頭をなでると、顎を水槽の縁に乗せ、うっとりする。冬眠を経て、暖かくなれば、また少しぽっちゃりと成長してくれるだろう。

  (文・宮晶子、写真・圷真一)

 <おおくら・まやこ> 1977年、岡山市生まれ。99〜2014年、舞踏家の大森政秀さんに師事、大森さん主宰の天狼星堂(てんろうせいどう)公演に出演。01年よりソロ活動も。04年、第35回舞踊批評家協会賞新人賞を受賞。近年は、他ジャンルの表現者とのライブパフォーマンスや、ヨガインストラクターとしても活動。

 

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