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【首都圏】

<談論誘発>夫に先立たれて地方の生活不便 東京に戻るシニア層も

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高齢者住宅情報センター東京センター長・久須美則子(くすみ・のりこ)氏

 「シニア世代」の東京離れが進む一方で、地方から再び東京に移り住むケースも目立っている。

 昨年六月、東京都板橋区の高島平団地のサービス付き高齢者向け住宅「ゆいま〜る高島平」に入居したAさん(70)の場合は、栃木県の那須町から移ってきた。

 もともと、都内に住んでいたが、夫の定年を機に、「二人で気軽にスキーを楽しみたい」と那須町に移り住んだ。永住するつもりでいたが、九年前に夫に先立たれ、一昨年秋には愛犬も死んだ。

 六十代後半で一人になってしまい、自宅に帰っても広いスペースに自分以外に誰もいない。住み替えの検討を始めたところ、やがて寝込んでしまい、それを契機に、高島平への移住を決断した。

 「ゆいま〜る高島平」は既存の団地の空室を高齢者用にリフォーム、入居費用は比較的抑えられており、一部屋単位の改修なので近隣には子育て中の家族も。高齢者だけの住居というイメージは全くなく、買い物も便利だ。

 この団地にはAさんのような例は少なくない。夫婦で地方に移り住んでいたBさんも夫が死亡、田舎暮らしに限界を感じて都内に戻った。年老いて車の運転ができなくなると生活が成り立たず、大きな家を守っていくのも大変。北海道から住み替えたというCさんも高齢で雪が怖くなって都会暮らしに。

 東京圏で「介護難民十三万人」というショッキングな数字が日本創成会議から発表されたのはちょうど一年前。同会議は首都圏から地方への移住を提唱した。国も地方移住のための施策に税金を投入、自治体を応援しているが、地方から都会への住み替えも少なくないのである。

 こうした動きは当然といえば当然で、「定年」「年金生活の開始」「連れ合いとの別れ」といった大きな変化が訪れた時、必然的に生活を見直す。この時に住み替えを選ぶ人が一定比率の割合でいる。平均年齢が伸び、高齢者人口が増えるに従って、こうした人の絶対数は大きくなり、社会的に目立つ動きとなる。

 つまり、高齢者の住居の流動性は高くなり、高齢者の地方への住み替えと都会への住み替えは「車の両輪」のように、いずれも必然なことといえないだろうか。

 都会に住み替える人はAさんのパターンが典型的なケース。都会は交通の利便性のほか、文化的施設、医療機関も充実、むしろ地方より楽しく安心ともいえる。文化的な拠点に群れるのではなく、個性的に生活を楽しむ高齢者の姿が増えそうだ。

 1955年生まれ。有料老人ホーム事業の再生などに携わる。一般社団法人コミュニティネットワーク協会理事

<シニアの移住> 総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告によると、昨年1年間に都外から東京に移り住んだ65歳以上は約1万5000人(男約6000人、女約9000人)と全国最多。大阪府に移った65歳以上は約7700人で、ほぼ2倍だ。ただ東京は他県への転出も多く、65歳以上は約2万人(男約9000人、女約1万1000人)に上る。大手不動産会社の調査によると、都内は高齢者向け住宅だけでなく、新築マンションも高齢者からの引き合いが強い。民間調査会社によると、首都圏のマンション購入者に占める60歳以上の割合もやや増える傾向にあるという。

 

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