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【首都圏】

<談論誘発>首都圏でも増加、所有者不明土地 放棄認め積極的管理を

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◆富士通総研主席研究員・米山秀隆(よねやま・ひでたか)氏

 所有者がわからない土地が全国的に広がっている。人口減少が進むなか、相続時に登記されない物件が増えていることによる。引き継ぎ手が遠方に住み、資産価値が低いなどの理由で放置し、相続を重ねていった場合、所有者にたどり着くことが難しくなりやすい。

 特に資産価値のない森林や農地などの場合は、コストをかけてまで名義を変更するインセンティブがない。地価が高い街中の宅地でも、狭小で活用しにくい場合などは、こうした事態が生じ得る。

 所有者不明の土地は首都圏でも例外なく増加。東京都板橋区では、危険な老朽建築物は二百七棟判明しているが、所有者を特定できるのは半数ほどとの認識である。

 こうした場合、土地に残された建物を除却したり、次の利用に供したりするためには、不在者財産管理制度や相続財産管理制度などを活用する必要がある。しかし、こうした措置を取るには手間と費用がかかるため、容易には行えない。現状は所有者の探索とその後の処理にコストがかかり、そのまま放置されるという問題が生じている。

 これに対して、登記の費用を下げたり、現在は任意の登記を義務化すべきだなどの意見がある。しかし、もはや所有することに価値がないため登記しないのであり、こうした措置が実効性を発揮するか定かではない。それならばいっそ、そうした場合には所有権放棄を認めたらどうかという考え方が出てくる。

 民法二三九条には、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」という規定があり、所有権放棄が認められれば、国の所有に移る。ただし現状は、登記に所有権放棄の手続きは存在しない。国の所有に移ると、国の管理負担が増すが、これについては放棄時に一定の費用負担を求めるアイデアもある。

 不要な土地がほっておかれて所有者がわからなくなり、事後的に所有者探索と処理に多くのコストを費やすよりは、最初から不要な土地については一定の費用負担を課すことで放棄を認め、国の所有に移しておく方が問題は少ないと考えることもできる。

 ただ、費用負担できない場合は、なし崩し的に放棄され、結果として所有者不明になる可能性は、この仕組みでも排除できそうにない。それでも現状よりは、放棄を認めた方が、その後の管理や利用はしやすくなると考えられる。今後、これ以上所有者不明の土地を出さないためには、発想を転換させ、放棄を認めることで、積極的に国の管理下におくのも一案である。

 1963年生まれ。専門は住宅・土地政策・日本経済。主な著書は「空き家急増の真実」「限界マンション」

 <所有者不明土地> 登記簿などの台帳でも所有者が判明しない、あるいは判明しても直ちに連絡がつかないような土地。国土交通省が2015年度に行った調査では、9割以上の都道府県が過去5年以内に、「所有者の把握の難しい土地が存在したことがある」と回答。土地のうちどれほどが所有者不明になっているかは明らかではないが、同省が全国の4市町村の私有地からサンプルを選び、登記簿を調べた結果、全体の19.8%が、最後に1964年以前に登記された状態。50年以上前の登記では相続登記がなされず、所有者の把握が難しい土地と推察できる。

 

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