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【首都圏】

<談論誘発>人口減 踏まえた見直しを 土地情報基盤法制度 隔たり

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◆東京財団研究員・吉原祥子(よしはら・しょうこ)氏

 所有者の居所や生死が直ちに判明しない、いわゆる「所有者不明」の土地が、災害復旧や耕作放棄地の解消、空き家対策など、公益上の支障となる事例が首都圏を含む各地で表面化している。

 なぜ、土地の所有者が不明になるのだろうか。その根底には、そもそも日本では土地の所有・利用実態に関する情報基盤が不十分だという課題がある。不動産登記簿、固定資産課税台帳、農地台帳など目的別に各種台帳は作成されている。だが内容や精度はさまざまで、一カ所で情報を把握できる仕組みはない。 

 各種台帳のうち、不動産登記簿が実質的に主要な所有者情報源となっているものの、権利の登記は任意である。相続人が相続登記を行うかどうか、またいつ行うかは、個人の事情をはじめ、景気改善による土地取引の活発化など、社会的、経済的な要因によっても影響を受ける。つまり、国土政策の基本である土地情報の精度が、市場動向や個人の行動によって左右される仕組みになっているのだ。

 地方から人が減り、地価の下落傾向が続くなか、今後、相続登記が今よりも積極的に行われるようになるとは考えづらい。司法書士の間からは「農地や山林はもらっても負担になるばかりで、相続人間で押し付け合いの状況」とか「最近相談者から、『宅地だけ登記したい、山林はいらないので登記しなくていい』と言われるケースが出てきた」という声を聞く。現行制度のままでは「所有者不明化」の拡大は不可避だろう。

 問題の解決に向け、まずは国と自治体が協力して全国の実態調査を進めることが必要だ。そもそもこの問題は情報基盤が不十分なために実態把握も進んでいないからだ。その上で人口減少を前提とした土地情報基盤および関連法制度のあり方について省庁横断で整理していくことが求められる。あわせて予防策としてNPOや自治体による土地の寄付受け付けの仕組みなど、地域状況に応じて所有者が土地を適切に手放せる選択肢を作っていくことが急務だ。

 現在の日本の土地制度は、明治の近代国家成立時に確立し、戦後、右肩上がりの経済成長時代に修正・補完されてきたものだ。地価高騰や乱開発など「過剰利用」への対応が中心であり、人口減少に伴う「過少利用」を想定した制度にはなっていない。

 「所有者不明化」問題とは、こうした現行制度と社会の変化のはざまで広がってきた問題なのである。土地問題を人口減少社会における課題の一つと位置づけ、制度見直しを進めることが必要である。

 1971年生まれ。98年から東京財団。国土資源保全プロジェクト担当。土地制度の課題に取り組む。

<所有者不明土地>

  米山秀隆氏 (富士通総研主席研究員)の意見要約

 (1)所有者不明の土地は首都圏でも例外なく増加。東京都板橋区では、危険な老朽建築物は207棟判明しているが、所有者を特定できるのは半数ほどとの認識である。

 (2)最初から不要な土地については、一定の費用負担を課すことで放棄を認め、国の所有に移しておく方が問題は少ないと考えることもできる。

 (3)ただ、費用負担できない場合、なし崩し的に放棄され、結果として所有者不明になる可能性も。今後は発想を転換させ、放棄を認めることで積極的に国の管理下におくのも一案だ。 (12月11日付)

 

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