東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 首都圏 > 記事一覧 > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【首都圏】

<談論誘発>残業上限の厳格化必要 ドイツに学べ、横断的な規制

独協大学外国語学部ドイツ語学科長

写真

◆大重光太郎(おおしげ・こうたろう)氏

 「働き方改革」のもと、多様で柔軟な働き方の議論が盛んだが、長時間労働の規制は軽視されたまま。ワーク・ライフ・バランスにおいて、労働時間規制は不可欠の前提である。どうすれば長時間労働の規制が進むのか。

 「時短先進国」のドイツでは、年平均実労働時間が千三百七十時間(二〇一四年)なのに対し、日本は千七百三十時間。一日八時間労働とすると、日本人はドイツ人より四十五日分多く働いている計算だ。日本の年約二百時間のサービス残業が加わると、格差はさらに広がる。

 ドイツで労働時間が短いのは決して国民性によるものではない。一九八〇〜九〇年代にかけて金属産業は週労働が四十時間から三十五時間に短縮されたが、粘り強い労働組合の闘いの結果であった。

 ドイツで労働時間を規制しているのは法律と労働協約の二つ。法律は週四十八時間、残業一日最長二時間と定めている。同時に産業別労使の間で労働協約が締結、企業を超えて適用される。産業全体で平均三十七時間だ。画一的、硬直的と批判される中、企業レベルでの裁量も広がってきたが、これも産業別労働組合の事前了解が必要だ。

 日本では法律で週四十時間を上限とするが、労働者を残業させる際に労使で結ぶ必要がある労使協定(三六協定)で、実際には際限のない長時間労働が可能だ。これは企業任せで労働時間規制ができないことを示している。

 ドイツから学べるのは横断的規制の大切さ、あえていうと横並びの硬直性の大切さ。この視点抜きでは柔軟な働き方も歯止めのない長時間労働につながる恐れがある。

 日本で必要なことの一つは企業横断的ルールの厳格化である。ドイツのような産業別の労働協約がない日本は、法律がもっと大きな役割を果たすべきだ。つまり三六協定や残業上限時間の厳格化、罰則の強化などが必要である。

 もうひとつは企業の横断的な監督機能の強化である。ドイツでは、産別労組とともに労働安全局(日本でいう労基署)が監督機能を担うが、日本は産別労組が未発達なため労働監督行政の強化が不可欠だ。労働基準監督官の数も、就労者比でドイツの三分の一に満たない。二重に監督機能が欠けている状況だ。

 課題の解決は世論の高まりなしに実現しない。実現しても働く人たちが自律的に規制する力をもたなければ絵に描いた餅で、労働組合などをどう再生させるかという課題につながる。労働時間規制という課題は「連帯」という問題を改めて突きつけている。

 1965年生まれ。同大学外国語学部教授。労使関係論やドイツ経済論が専門。社会学博士

◇働き方改革

 小室淑恵氏(ワーク・ライフバランス社長)の意見要約

 (1)東京都の小池百合子知事は昨年10月中旬から「午後8時までに仕事を切り上げ帰宅することを職員に促す」取り組みを始めた。行政機関と関わりのある企業ほど残業が多い。

 (2)民間企業は働き方改革で生産性をあげて競争に勝ち残るためにしのぎを削っている。行政機関こそが長時間労働の負のサイクルを断ち切り「隗(かい)より始めよ」と言いたい。

 (3)私の試算では一国会にかかる官僚の残業代は約20億円、都庁の職員の残業代は約9億円。毎年その予算があれば、保育所がいくつつくれるだろうか。 (1月22日付)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報



ピックアップ
Recommended by