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【首都圏】

<談論誘発>「未病」の改善に全力で 健康と病気の間 連続的に変化

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◆神奈川県知事・黒岩祐治(くろいわ・ゆうじ)氏

 「最近、未病という言葉をよく見聞きするようになりましたが、あれは神奈川県発だったんですか?」 何人かの方にそう言われ、私自身驚いた。「未病なんてわかりにくい」「一般には全然浸透していない」と一部から批判され続けてきたからである。

 健康か病気かという白赤二分論ではなく、健康と病気を連続性の変化・グラデーションでとらえるのが未病の考え方だ。超高齢社会を乗り越えるためには、病気になってから治すのではなく、未病を食・運動・社会参加によって改善し続けることが必要と、神奈川県の最重要政策と位置づけて取り組んできた。

 政府の健康・医療戦略参与会合の中でも、私はメンバーの一人として、未病改善の重要性を繰り返し主張してきた。しかし、当初は全く相手にされなかった。霞が関の思考は白赤モデルだった。赤、すなわち病気の部分を担当するのは厚生労働省だが、グラデーションを担当する役所は存在しなかったからである。

 一方で、われわれは「ME−BYO」(未病)コンセプトの国際展開を圧倒的な勢いで進めた。世界保健機関(WHO)などの国際機関をはじめ、欧米、アジアの政府機関、大学などと次々に覚書を結ぶことができた。不思議なほどME−BYOコンセプトは海外で受け入れられて共感の輪が広がった。日本が超高齢社会の先進国だからこそ注目を集めると実感した。二年前には神奈川県箱根町で世界から保健医療の第一人者を招いて未病サミットと銘打った国際会議を行った。

 健康・医療戦略参与会合メンバーの横倉義武・日本医師会長が賛意を示してくれたことから、流れは大きく変わり始めた。そして、ついに健康・医療戦略の中に正式に未病が盛り込まれ、ことし二月に閣議決定されるに至った。

 最先端のテクノロジーは未病の見える化を可能にしている。身に着けて歩ける「ウエアラブル端末」など、さまざまなセンサーで未病の状態を知ることができることから、自ら改善に取り組む動機づけとなる。これらを支えるのは膨大なビッグデータの処理技術と人工知能(AI)である。こういった未病改善のプロセスは新たな未病産業を生み出しつつあり、県の未病産業研究会には四百三十社を超える企業等が参加している。

 超高齢社会という課題を乗り越えるプロセスによって、経済のエンジンを回していこうというのが、われわれの戦略である。国家戦略に格上げされたことを契機に、国とも連動しながら、“未病革命”を起こしていきたい。

 1954年生まれ。フジテレビジョン入社。国際医療福祉大学大学院教授を経て、2011年から現職。2期目

<未病> 約2000年前に出版された中国最古の医学書「黄帝内経」によると、未病は「治未病」と記述があり、日本では江戸時代の本草学者・貝原益軒の「養生訓」において、黄帝内経を引用して「未病を治す」との記述がある。今年2月に閣議決定された国の「健康・医療戦略」では、未病とは「健康と病気を二分論の概念で捉えるのではなく、心身の状態は健康と病気の間を連続的に変化するものとして捉え、このすべての変化の過程を表す概念である」と新たな定義が盛り込まれた。軽度の糖尿病や高血圧といった生活習慣病は未病に位置付けられる。

 

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