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【首都圏】

「治療3600人超え」ギネス申請 東京・練馬 音楽家専門医院の酒井さん

リハビリ室にグランドピアノを置いた医師・酒井直隆さん

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 音楽家特有の障害を治療している東京都練馬区江古田の医師酒井直隆さん(63)の整形外科医院で、リハビリ室にグランドピアノを置いたところ、リハビリに励んでいる患者に「早く故障を治してピアノを弾きたい」と、回復へのモチベーションを高めると評判だ。酒井さんはこれまで3600人を超える演奏家を治療していて、ギネスブックに「世界で最も多くの演奏家を治療した医師」と認定申請している。 (小寺勝美)

 千葉県生まれで、山形大卒業後、横浜市立大学病院で研修医を務めた。音楽家治療のきっかけは一九八四年、学生時代に習ったピアノの先生から腱鞘(けんしょう)炎に悩む患者を紹介されたこと。「耳鼻科を目指していましたが、ピアニストに貢献できると思い」進路を変更した。外科やリハビリテーションの先輩医師や同僚らに「音楽家の障害を治療する分野は考えられないか」と相談したが、「人並みの生活ができない患者さんを治療するので精いっぱい。お稽古事の障害を治療する医学は考えられない」「趣味と仕事の混同だ」と冷ややかだった。そんな中でも治療を続けた。

 当初は手や腕の治療専門だったが「オーケストラにはさまざまな楽器があり、障害もさまざま。トータルケアが大事」と、現在は首から肩、背中、腰、脚など全身の痛みを診る。指などが麻痺(まひ)するといった症状が出るフォーカル・ジストニアという特殊な障害の治療のために東京・渋谷にスタジオを借りている。「演奏中に出る病気ですが、症状が出る曲と出ない曲があるなど、複雑なので演奏を見ながら症状を診ます」

 練習を休まずに治療を続けるのが酒井さんの療法で、治療する患者の九割はプロだ。クラシックからロックまで著名な演奏家も多く、海外から日本公演に来た音楽家の治療のためホテルに出向くことも度々ある。

 二〇一五年五月、練馬区に現在の医院を開業。リハビリ室にピアノを置いたのは今年二月で「音楽家専門という象徴的な意味で置いてみました」。看板代わりに置いたつもりが、訪れる患者から「治ったらあのピアノ弾かせてください」と言われるようになった。「患者さんの目の色が違ったのです。もっと早く置けばよかった」と言いながら、思いがけぬ展開に酒井さんは、月二回程度の昼休み演奏会やリハビリとしてBGM代わりの演奏も始めた。

 米国で音楽家を治療する医師グループが酒井さんの存在を知り、連絡を取ってきたこともあり、「やめようと思ったこともあった」というが「道は間違ってなかった」と確信している。

 

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